日本ハムが23年春に開業予定の新球場「エスコンフィールドHOKKAIDO」。命名権を取得したのは、東証1部上場の不動産会社「日本エスコン」(本社・東京)だった。同社の伊藤貴俊社長(48)がインタビューに応じ、超大型契約を結んだ経緯や、ボールパークを中心とした街づくりの構想を語った。【取材・構成 木下大輔】

新球場の命名権を取得した日本エスコンの伊藤社長(撮影・木下大輔)
新球場の命名権を取得した日本エスコンの伊藤社長(撮影・木下大輔)

■「分不相応です」

総額50億円以上、10年を超える超大型契約で命名権を取得したのが「日本エスコン」だ。同社の伊藤社長は、日本ハムのボールパーク構想に共感。新球場を核とした街づくりを目指すパートナー企業として、事業に参画することが先に決まっていた。だが当初命名権の取得は想定していなかったという。

伊藤社長 街づくりに参画させていただくと合意した後、ファイターズさんの方から「ぜひ、球場の命名権を取得されませんか?」とお話をいただきました。正直、我々の会社のネームバリューより、もっとメジャーな会社様が球場名を付けるというのが一般的だと思っていました。最初は「我々には分不相応です」とお断りさせていただきました。

あくまで新球場を核とした街づくりを手がけるパートナーとしての役割を遂行するつもりだった。心を動かされたのは、球団側の情熱に打たれたからだ。

伊藤社長 何度かお話をいただく中で「一緒に成長していける企業と、将来の街づくりを」という言葉が非常に胸に刺さりました。ともに成長していける会社に、この球場の名前をぜひ付けてもらいたいということで、命名権を取得させていただきました。ともに街づくりをしていくことが先で、その後に命名権の話をいただくことができた。話が逆であれば、おそらく命名権を取得する判断はしなかったと思います。

■次世代に継承

球場名発表は、開業の3年前。日本では前例がないタイミングになった。

伊藤社長 自分自身の子どもに名前を付けるようなもので、わが子を育てることを想像しながら考えた際に、やはり完成する前から名前が決まっていた方が皆さまに親しみを持っていただけると思いました。「エスコンフィールドHOKKAIDO」という球場名が、どんどん次の世代へ受け継がれて、皆さんの脳裏に焼き付けてもらえるようなものになればと思います。

日本ハムのボールパーク建設現場(7月9日撮影)
日本ハムのボールパーク建設現場(7月9日撮影)

球場を核とした街づくりは、球団、北広島市とともに進めていく。札幌のベッドタウンという色が濃かった同市が、どう変化していくのか。描く青写真は。

伊藤社長 この北海道での街づくりを考えたときに、プロ野球が人を集める力は、本当にトップクラスで、ファイターズファンの熱意も考えると、今後この地のポテンシャルはますます高まっていくイメージを持っています。街づくりをしていく上で大事なことは、その街に暮らす人々のコミュニティーを創り出すこと。暮らしに密着した商業施設開発、医療面のサポート、特に今後はITを駆使した街づくりなど。まさにこれから創っていく街だからこそ、可能な取り組みになっていくと思います。他の例をまねするより、しっかりこの街の特性を創ること。むしろ、真っさらな感覚の方が、より素晴らしいものが創り出せると思っております。ファイターズさんを応援されている道民の方のお力が、より魅力あふれる街に変えていく、成長していく要素を持つプロジェクトだと感じております。

◆伊藤貴俊(いとう・たかとし)1971年(昭46)9月1日生まれ。京都市出身。大谷大卒。01年9月に日本エスコン入社。11年3月に代表取締役社長に就任。

◆株式会社日本エスコン 95年4月に大阪で設立。現在は東京・港区と大阪・中央区の両本社体制。分譲マンションの開発が主力事業で、商業施設、ホテル、物流施設の開発や土地区画整理事業などを行う。05年から16年にかけては、福岡・春日市と一部大野城市に位置するゴルフ場の移転跡地約43ヘクタールの広大な敷地に、住宅エリアと商業エリアなどで構成される「春日フォレストシティ」の開発を手がけた。18年8月には中部電力株式会社と資本業務提携を締結、20年秋には札幌・中央区に北海道支店を開業予定。19年12月期の売上高は約721億円。


<日本ハム担当の山崎記者の「純さんぽ」>

ボールパーク建設地周辺を日本ハム担当の山崎記者が歩く「純さんぽ」。今月も、新型コロナウイルスの影響で人通りのまばらな北広島市内を歩きました。

北広島市内にあるMon bon cafe(モンボンカフェ)の店内(撮影・山崎純一)
北広島市内にあるMon bon cafe(モンボンカフェ)の店内(撮影・山崎純一)

北広島駅を出て徒歩1分、おしゃれなお店「Mon bon cafe」(モンボンカフェ)を発見した。暑い日にぴったりのスッキリとしたのどごしのアイスコーヒーに、ボリュームたっぷりの日替わりパスタがよく合った。

2人の子を持つ店主の福元未来さん(44)は、ボールパーク効果を期待している。一家は大の野球好きで、中学2年の男の子と小学6年の女の子は野球チームに所属している。「今は野球離れが進んでいると言われているので、野球少年(少女)たちのやる気も出るんじゃないかなと。北広島としても今まであまり大きな目玉の観光施設がなかったので、すごく楽しみですね」。

恵庭市内にあるcafe福座の姉妹店であるこのお店。「私の大好きな場所、お気に入りのカフェ」という意味を持つ店名の通り、その空間はどこかほっとする。野球観戦のおともに焼きたてパンやテークアウト弁当もおすすめ。試合後には勝利を喜ぶ多くのファンでにぎわっているだろう。【山崎純一】