無念の表情だった。「やっぱり目の前で見て、その場でお祝いしたかったよな…」。阪神新井良太は爽やかな秋空に目を細めながら、静かに言った。

 6月18日に出場選手登録を抹消されて以来、1軍の舞台から遠ざかる。鳥谷が9月8日DeNA戦で2000安打を達成した瞬間も、テレビ映像で見届けるしかなかった。2歳上の先輩とは数年にわたり、弟分のように世話になってきた仲。メモリアルゲームに立ち会えず、切ない気持ちがこみあげるのは当然だ。大台到達の後、良太は先輩の自宅までお祝いの品を届けにいったという。

 「トリさんはクールに見せて、本当に優しい人だから。いい時に声をかけてくれる人はいっぱいいるけど、後輩がつらい状況に立たされた時に、そっと手を差し伸べてくれる人。ブレない人だと思う」

 鳥谷先輩のすごさを問うと、良太はそう返した。

 妥協なきトレーニング、重傷を負ってもグラウンドに立ち続けるタフさ、そして…。さりげなく後輩たちを気遣える心も、若虎たちの手本となっているようだ。【阪神担当=佐井陽介】