野球界にも話題の「情報公開」問題がある。11月22日、ヤクルトは都内の球団事務所で1、2軍合同会議を実施。その場で来季はけが人の詳細を公表しないと決めた。これまでは「右肘疲労骨折で全治3カ月」と病名など具体的な内容を発表していたが、今後は「上半身のコンディション不良」などといったものになる見込みだ。

 この変更について小川淳司監督(60)は「総合的に判断した。他球団にケガの情報が伝わるのはプラスにならない。公表しない球団もある。トレンドにのるというところ」と説明した。

 今季、ヤクルトはけが人が続出した。川端、畠山、雄平、小川、山中、秋吉、中村、大引といった主力が負傷離脱。チームは球団最悪の96敗を喫する原因ともなった。6月の本社の株主総会では株主からもけが人における質問が飛び出すなど関心が高い事象だ。

 故障者情報の捉え方はさまざまだ。小川監督は変更の理由の際に「そんなにけが人の情報は知りたいのかな? 本当に熱心なファンの方しか興味がないでしょ」と言った。だが、サッカーのJリーグは故障者情報をリリースする。名前の大小にかかわらずファンへと伝える。くじの「toto」の関係もあると思われるが、必要な情報であり、ファンの知る権利に積極的に応えるためだ。

 非公開にするメリットはある。けが人が出れば、そこは弱点となり、攻め込まれる。また故障の既往歴が幅広く知れ渡れば、選手獲得の際に二の足を踏んだり、トレードが成立しづらくなるかもしれない。情報を隠すことで勝利への確率は高くなり、チーム運営もスムーズになるかもしれない。

 一方でマイナス要素もある。プロ野球は一流のプレーはもちろんだが、選手の人間ドラマに感情移入する部分も大きい。ヤクルトでいえば、館山や由規はケガからの復活を果たし、大きな声援を浴びている。お目当ての選手の復帰戦とあれば、ファンはチケットを買い求める。仮に復帰時期や病名が判明しなければ、球場に足を運ぼうと思うファンは減ってしまうのではないか。

 また細かなケガであっても関心は高く、登録抹消などの記事は弊社のウェブサイトでも一定のアクセス数がある。ファンの知りたいという思いに応えられなければ、将来的な人気低迷につながる可能性はある。

 衣笠剛球団社長(68)は「今季はけが人の数は少なくなっていたが、主力選手に続出したために、ヤクルトはやっぱりけが人が多くて負けたという印象を持たれてしまった。評論家の方々もそういう論調だったし、なんでもかんでも公開することが果たしてメリットになるのか。もちろん今季の川端(開幕前にヘルニアで離脱)など、分かりきっているケガは公表しないといけない。それによって例えば、またあの選手が戻ってくるのかといって球場に来てくれるお客さんもいるかもしれない。どこまで出すのかというのは開幕してみないと分からない」と話した。

 情報統制か、情報公開か。みなさんはどう考えますか? 【ヤクルト担当=島根純】