マートンが苦悩を吐き出してくれたのは13年初夏のことだ。博多の高級ホテルにある喫茶店。「やっぱり、自分は外から来た人間なんだと感じてしまうことがあるんだ。“ガイジン”がこんな悩みを持っていると知ってほしい」。そう前置きして明かしてくれた本音が、今も忘れられない。

 「外国人選手はちょっとでも打てなかったら、もうダメだという目で見られてしまう。なんとか期待に応えないといけないと強く思う中で物事がうまく進まないと、周りに背を向けられたように感じる部分もあるんだ。この素晴らしいチームに所属して、素晴らしい仲間やファンに支えられている僕ですら、そう感じてしまう時があったんだ」

 普段は温厚なナイスガイ。ただ、不振が続いた時期は感情を抑えきれない場面も目立ち、発言が誤解を招いて騒動になったこともある。ただ、それは常に、仲間やファンに喜んでもらいたいという焦り、責任感の裏返しだったように思う。

 当時、マートンはよく自分を日本語で「ガイジン」と言い替えていたが、メジャー再挑戦という夢を一時は封印してまで6年間戦い抜いた姿を、虎党は覚えている。今はもう「ガイジン」という表現は似合わない。【阪神担当 佐井陽介】