東京・神田にあるニコライ堂は五月雨にぬれていた。ホークスの監督でもあった故根本陸夫氏(享年72)が今も静かに眠っている。「母の日」でもあった13日、隆子夫人と親族らが19回目の祈りをニコライ堂の緑青色のドームの中に眠る故人にささげた。4月30日の命日から2週間。スケジュールを調整して隆子夫人ら親族は久々にそろった。

 「球界の寝業師」とも呼ばれた根本さんが世を去って19年の歳月が過ぎた。あの世から今のプロ野球界をどう見守っているのだろうか…。根本さんが生前、こっそりと話してくれたことがある。

 「ヤクルトを辞めた栗山くんがいるだろう。彼をなあ、西武の時、球団に誘ったんだ。彼はしっかり勉強もしとるしなあ。でも残念だったなあ」。根本さんが人を誘った話をするのは珍しかった。だから深く記憶に残っていた。そしてこの日、ヤフオクドームにいた日本ハム栗山監督も鮮明にその出来事を覚えていた。いや、今でも根本氏の言葉を肝に銘じているような話しぶりだった。

 「現役を辞めて、マスコミの仕事をすることになっていたので、根本さんから誘われましたが、西武球団まで行って丁重にお断りさせていただきました。すると、根本さんは『マスコミの人がどんな感じで仕事をしているのか、しっかり勉強しなさい。君のためになるから』と言われて…」。もう30年近く前の話である。根本氏は当時の栗山監督を編成部門を統括するフロントマン、自らの後継者として育てたいと思っていたようだった。縁とは不思議なものだ。その栗山監督は日本ハムの監督に就任する際に球団幹部から「根本陸夫になりませんか?」と口説かれたという。

 今季、連覇を狙うホークスにとってライバルになりそうな栗山ハム。一昨年は日本ハムに大逆転Vされ昨年はホークスが雪辱V…。故人をしのびつつここ数年を振り返ってみると、何とも因縁深いではないか。【ソフトバンク担当 佐竹英治】