もう1つの負けられない戦いがあった。

 サッカーワールドカップ(W杯)ロシア大会決勝トーナメント1回戦で、日本代表が世界ランク3位のベルギーに2ー3で敗れた。3日午前3時と夜深い時間のキックオフにもかかわらず、日本中のファンが眠い目をこすりながら、テレビにかじりついた。

 だが、巨人アレックス・ゲレーロ外野手(31)は日本戦には目もくれなかった。「小さい頃からブラジル代表のファンなんだ」と2日午後11時開始のブラジル対メキシコに夢中だった。。試合はエース・ネイマールの先制ゴールもあり、2ー0でブラジルが勝利。ゲレーロは翌日も午前から練習があるため、試合終了まで観戦せずに就寝。インターネットで結果を確認し「やっぱりブラジルがNo.1だね」と喜んだ。

 母国キューバは北中米・カリブ海に位置する。同国のサッカー代表は「カリブのライオン」の愛称で呼ばれ、1938年にカリブ海の国として初めてW杯に出場。ベスト8入りと躍進したが、それ以来出場はない。世界的に強豪の野球やボクシング、女子バレーボールなどに比べれば、サッカーはそれほど盛り上がりを見せていない。

 それでも98年フランスW杯で準優勝に輝いたブラジルの戦いぶりに、当時11歳のゲレーロ少年は感銘を受けた。「点を決めるストライカーが好き。ロナウド、リバウドのプレーが好きだったんだ。ロナウドの大五郎カットをまねしたこともあるよ(笑い)」。生まれつきのホームランバッターなのか、華麗なシュートでゴールを決めるストライカーに目を奪われた。

 コンディション不良のため、6月15日に出場選手登録を抹消。同月21日のイースタン・リーグのロッテ戦で実戦復帰し1安打を放った。だが、7試合で19打数1安打。「この時間を使ってしっかりと打ち込んでいけば、見えてくるものがある」とマシンで打ち込みを繰り返し、きっかけを模索している。「最後は監督が決めることだけど、2軍でしっかりと結果を出して、1軍に上がりたい」。ベスト16の壁…ではなく、4年ぶりのリーグ優勝の壁を破るには、試合を決めるホームランキングの一振りが欠かせない。【巨人担当 桑原幹久】