<SMBC日本シリーズ2018:広島0-2ソフトバンク>◇第6戦◇3日◇マツダスタジアム

やはり、というべきか。今年もソフトバンクは強かった。2年連続で日本一に駆け上がった。ホークスの連続日本一は14年、15年に続き、この5年で2度目。まさに圧倒的な強さを発揮していると言っても過言ではない。ホークスは平成と時を合わせて大阪から福岡にやってきた。この30シーズンで計7度の日本一は12球団最多。特に平成後期の10年間は「ソフトバンクの時代」であった。優勝5度、Bクラスは1回しかなかった。そして平成最後の日本一チームとなった。

さて、ホークスの今年を総括すると「勝った」のであろうか。それとも「負けた」のであろうか…。実はこの単純な問いに、考えれば考えるほどすっきりした答えが見いだせない。緊張感100%のクライマックス・シリーズ(CS)をファーストステージから計8試合。3位日本ハム、そして1位西武を見事に破って日本シリーズに進出。セ界3連覇の広島も撃破した。「下克上」と言われるリーグ2位からの逆襲で頂点に立った。この意味では「勝った」のであろうが、短期決戦のルール上の勝利でもある。143試合のリーグ戦を振り返れば、西武に6・5ゲーム差をつけられて2位に甘んじた。かつてのV9巨人を抜くリーグV+シリーズ10連覇をぶち上げた孫球団オーナーの思想からすれば「負けた」シーズンでもあったはず。だからこそ、元号も変わり新時代に突入する来季は「王者」のプライドを持ちつつ「挑戦者」の意気込みを忘れてはならない。

チームの世代交代が言われるが、まだ「成長期」でもある。印象的だったのは西武を下しCSファイナル突破した日のチーム祝勝会。主力選手たちは「ビールかけ」に疑問を投げかけていた。「リーグV、日本一なら堂々とできるけど、2位からのCS突破では…。(ビールかけを)やる必要はないのでは」。ある主力選手はそう話した。リーグ戦で敗れた悔しさを内包したままでは、素直に喜べないという心境だ。若手ははしゃいだ。祝勝会を取材した地元テレビ局関係者は「いつものノリではなかった。特に主力選手はほとんど(ビールかけ中の)インタビューに応えなかった」と話していた。

悔しかったのだ。選手たちは「負けた」シーズンと、その肌でしっかり感じ取っていたのだ。「強き伝統」をつむぐのは「悔しさ」の募らせ方かもしれない。シーズン2位に甘んじた悔しさを肥やしたからこそシリーズ制覇を果たせたようにも思う。勝たなくてはならない、というプレッシャーから解放された気持ちもあったかもしれない。ベテラン川島が叫んだ「俺たちは2位なんだ!」という合言葉には複雑な意味が隠されていたように感じる。「勝っても」「負けても」最後は勝つ-。本当の「強さ」を鎧(よろい)のように身にまとうための通過点の日本一でもあったように思う。【ソフトバンク担当 佐竹英治】