お尻が芝生すれすれになるほど、腰を落として構える。三塁手として、ゴールデングラブ賞を初受賞したDeNA宮崎敏郎内野手(29)の捕球体勢は、まるで相撲の四股のようであり、和式便所のようだ。不思議に思って聞いてみると「股関節が硬いから、柔らかくするために今の体勢になったんですよ」。速い打球を処理しなければいけない三塁手。レギュラーポジションを獲得するため、1歩目にこだわった結果だった。

プロ入り2年目の頃、医者から言われた。生まれつき股関節の形状が独特な「ピストル・グリップ」だと診断された。本来は手術しなければ治らない形状。股関節周りが硬く「打球への1歩目が出ない」と悩んだ。ヒントはオフに合同自主トレを行うソフトバンク松田から得た。重心の低い姿勢を見て参考にし「強い打球に対して飛びつきやすくなった」と克服。金色のトロフィーを抱え、その松田と同じ壇上に並んだ。

もともと、右の代打要員として、12年ドラフト6位で入団。打撃には定評があった。「打って守備位置を与えられるタイプ。試合に出させてもらう中で、守備に対する気持ちも変わっていった。その中で、守備のタイトルを取れたことはうれしい」。昨季は首位打者を獲得。右足1本で構える独特のフォームは、小学生時代から変わっていない。突き詰め続ける不変の打撃の一方で、試行錯誤を繰り返した守備。その両輪で球界を代表する選手にまで成長した。【栗田成芳】