打撃投手として、初めての“開幕1軍”を果たした左腕がいる。ソフトバンク伊藤祐介打撃投手(28)だ。12年ドラフト2位で東北学院大から入団。この時の1位は東浜だった。

度重なる故障に泣き、1軍で登板することなく4年目からは育成契約となり、6年目を終えた昨季、引退し打撃投手に転向した。「今まで140キロを超える球で抑えようと投げていた。100キロほどの球速で打ちやすい球を投げようとしても、なかなか体がうまく動かないんです」。キャンプ、オープン戦と制球がまだ定まらず、死球を当ててしまうこともある。投手から打撃投手に生まれ変わる過程で、現在もがき苦しんでいる。

1月の自主トレで一緒にトレーニングを行った高谷は「投げる距離も短くなったし難しくなる。ボール球を見逃すのも僕らの練習だし、緊張し過ぎずに投げてほしい」と話す。同じ12年ドラフトで3位で入団した同期の高田も、感じたことをアドバイスする。

先輩の岸打撃投手はプロ経験がなく独立リーグからソフトバンクの打撃投手となった。「始めは誰でもうまく投げられない。僕の時は松中さんにスライダーを当ててしまったけど、松中さんが次の日も打撃ケージに立ってくれた」と、周囲の温かく見捨てない気持ちや行動で乗り越えられたと話す。伊藤打撃投手も「本当に大事に育ててもらっています。頑張らないといけない」と、周囲の思いに感謝する。ずっとヤフオクドーム、1軍とは無縁のプロ野球人生だった。打撃投手として壁を乗り越え、1軍の貴重な“戦力”と成長していく姿を楽しみにしたい。【ソフトバンク担当 石橋隆雄】