<高校野球春季岩手大会:大船渡17-2住田>◇3日◇沿岸南地区2回戦◇釜石市・平田運動公園野球場

大船渡・国保(こくぼ)陽平監督(32)は、佐々木の骨密度測定をしたことを明かし「まだまだ大人になっていない」と話した。163キロにも「まだスピードに耐えられる体じゃない」。佐々木に限らず、教え子のケガを何より心配する。

根底には「野球を嫌いになってほしくないから」という確固たる信念がある。09年WBCでメキシコ代表の試合を観戦。ラテンの野球に刺激を受け、米独立リーグに挑戦するなど、野球にスポーツ本来の「楽しさ」「尊重」を求めてきた。

大船渡ベンチを眺めると面白い。特に練習試合は選手たちの表情が実に穏やかだ。監督が不機嫌なシーンはまず見ない。2ストライクと追い込まれた打者に、監督が「みのさん(見逃し三振)、空振り(三振)、何でもOK!」とベンチから声をかけ、相手応援団も爆笑。その直後に打者がヒットを打った。

いわゆる“スポ根”とはかけ離れたストレスフリーの空気が大船渡にはある。選手とともに楽しみながら、国保監督も陰では悩む。「投手はいつ誰が突然マウンドでケガをするか分からない。本当に心配です」。3日の佐々木の先発起用も「朝まで迷った」という。「いろいろなものを背負える運命なのかな」が決断理由だった。

佐々木は大人のそんな葛藤を感じ、応えられる高校生だ。「国保監督は選手のプレーや考えを尊重してくれる。だから積極的にプレーできるんです」。質問に割と慎重に答える佐々木も、恩師への思いは即答だった。【金子真仁】

住田対大船渡 力投する大船渡・佐々木(撮影・足立雅史)
住田対大船渡 力投する大船渡・佐々木(撮影・足立雅史)