<巨人6-5中日>◇1日◇東京ドーム

大歓声が巨人阿部慎之助を何度でもよみがえらせる。

40歳の肉体は常に悲鳴を上げている。持病の首痛は梅雨時期に入ると痛みを増す。捕手復帰を決めた昨年11月。「もしかしたらと思って。淡い期待をしたけど…」。頸椎(けいつい)ヘルニアで1度は断念した天職。「最近は痛みは大分、落ち着いてきた」と復帰を決め、都内の病院で精密検査を受けた。検査結果は以前と変わらなかった。「ファウルチップを1回でも食らったら終わりだろうね。でもやるしかないから。そんなに先が長いわけでもないし。やれるだけやる」。一瞬の失望を、希望の活力に転換した。

捕手の練習は徐々に再開するも、捕手として出場のメドは立たない。開幕から代打の切り札としての役割が続き「いつもいい場面で使ってもらっている。自分の記録とか考えている余裕はない」。バットを短く持ち、試合の状況の中でチーム打撃に徹してきた。「代打は難しい。ましてや本塁打なんて、なかなかの離れ業だと思うよ」。400号の大台への焦りではない。切り札としての重圧に、若干の戸惑いはあった。

そんな阿部がしみじみ言う。

「あの歓声を聞いたらね。ありがたい。本当にありがたい。毎回、スタンドが盛り上がってくれて、本当にうれしい。『なんとか打ちたい』という気持ちに毎回させてもらっている」

400本の本塁打を放った百戦錬磨の阿部も、代打本塁打に限れば2本だけ。10本の満塁弾を放った男でも代打は難しい。6回2死、中日田島から放った今季1号、通算400本塁打も代打ではなく、この日2打席目での偉業達成だった。開幕から50試合目。阿部の1発で連敗に沈んでいたチームがよみがえった。【巨人担当 為田聡史】