「いや、特にそれはないですね」という明確な否定に、期待感が募った。

1月中旬、19年盗塁王の阪神近本を取材した時のひとコマだ。

矢野監督がかねて温めている2番近本構想について、あらためて話を聞けるタイミングだった。

2番で出塁しても、クリーンアップ勢が打席に入っている状況では、どうしても走りづらくなったりしないか?

何の気なしに素朴な疑問をぶつけると、即座に冒頭の言葉が返ってきた。

少し的外れな質問になってしまったなと反省しながら、そのまま理路整然と説明される理由にウンウンとうなずかされた。

「後ろがクリーンアップだと(初球を)真っすぐで入るのが難しかったりする。初球をスライダーとかボール球で入るとなれば、こっち(走者)の方が有利になるとも思うので」

納得-。

近本が言う通り、強打者が相手になると、バッテリーはより初球の入り方に気を使いがちだ。簡単に直球では入りづらく、そうなれば走者近本からすればしめたもの、というわけだ。

「その状況で(初球に走って)ストレートが来たとしても、それがストライクになってバッターが打ったら、走っている方からすればそれはそれでいいですしね」

またまた納得-。

バッテリーからすれば、初球を慎重に変化球で入れば、近本に走られるリスクが大きくなる。逆に初球盗塁を恐れて真っすぐを投げると、今度は強打者に狙い打ちされる可能性が高まる。どちらにせよ、2番近本が出塁すると、厄介で仕方がないことだけは間違いない。

ルーキーイヤーだった昨季は1番先発が108試合、2番先発が28試合。20年は2月の1軍キャンプから本格的に2番起用を試される方向となっている。

今季もし2番を主戦場とする場合、走者近本がもたらすスリリングな初球の攻防から目を離さないようにしなきゃと、勝手に妄想している。【遊軍=佐井】