<オープン戦:ソフトバンク0-2ヤクルト>◇3日◇ペイペイドーム

「桃の節句」に桜は少しばかり早いが、プロ4年目のサウスポーが「サクラ咲く」の開幕切符を手に入れようとしている。昨年までソフトバンクに在籍していたヤクルト長谷川だ。この日の試合に3番手で登板。1四球は与えたが、1回を無安打無失点に抑えた。最速153キロの速球を武器に思い切り腕を振った。

「めちゃくちゃ楽しい。投球はまだまだですけど、今は本当に楽しいです」。15球。あこがれても届かなかったホークス本拠地のマウンドで21歳の左腕は躍動した。16年育成ドラフト2位で入団。ホークスでの3年間は背番号「134」を背負った。育成3年目を終えた昨シーズン後、育成での契約延長を打診されたが、そこはプロの世界。支配下契約を用意してくれた新天地ヤクルトでの勝負を決めた。

長谷川の移籍決断に複雑な思いを持った男がいた。聖徳学園時代から「10年に1度の逸材」と足しげく東京・三鷹市にある同校グラウンドに通った山本省吾スカウトだ。今年1月。福岡・筑後市のファーム施設で育成練習を見守った。だが、長谷川はもういない。「やっぱりさびしい。僕が見た選手の中で最高なんです。活躍するならホークスで、と思っていたんですけどね。まあ、こればかりは…」。諦めきれないような口調でそう話していた。

かわいい後輩にエールを送る大先輩もいる。ホークス和田だ。この日の投球を選手ロッカー室のモニターで見守った。「よかったですね。四球もあったけど、カウント3-1から置きにいかず、153キロの直球。しっかり腕を振っていましたから。僕はいい投球だったと思います」。今日4日、39歳の大先輩サウスポーは先発登板予定。新天地でチャンスをつかもうとする後輩に負けない投球を誓っていた。

春は別れと出会いが交錯する。【ソフトバンク担当 佐竹英治】