必ずはい上がる-。そんな強い気持ちを胸に、中崎翔太投手(28)は広島・廿日市市内の大野練習場でひたむきに汗を流す日々を送っている。今季は開幕直前に1軍に昇格。6試合に登板し、防御率9・00と振るわず、7月10日に2軍降格となった。

中崎は現在、ファームで育成強化を目的に今季3月に新設された投球動作解析班、通称「2・5軍」に所属し、1軍返り咲きを目指している。投球の軌道や回転数が計測できるラプソードや、スロー再生ができる高速度カメラをブルペン投球練習で活用。「映像を見ていてもバラバラなところが多いですし、少しでも真っすぐと変化球にしても同じようなフォームで投げられるように、工夫しながらやっています」。安定したフォーム習得を目的に試行錯誤を繰り返している。

絶対的守護神としてリーグ3連覇を支え、3年連続胴上げ投手となった。15年から18年まで60試合前後に登板してきた。しかし昨年は36試合と出場機会を減らし、8月26日の出場選手登録抹消を最後に1軍に戻ることはなかった。オフの11月には右膝半月板部分切除手術を敢行。再起を喫した今季だったが、本来の力を発揮できず、2軍へ。いくつかの選択肢があった中で、自ら「2・5軍」での調整を選んだという。

同軍で技術指導を行う畝龍実3軍統括コーチ(56)は中崎について「去年もそうだったけど、腰が高くなってた。高いところから投げようとしてるから、もう1個低いところからいこう」と話したという。「やっぱりあれだけの潜在能力があるし、ちょっとしたところが治れば問題はないと思う」と復活を期待した。

“愛弟子”の活躍にも刺激を受けている。現在リーグ2位の12ホールドポイントを挙げるなど奮闘する6年目の塹江敦哉投手(23)だ。公私ともに一緒に過ごす時間が多い2人は、17年1月から毎年自主トレを行っている。勝ちパターンでの起用が目立つ左腕に「頑張っているなと思います」と感慨深げだった。

塹江の進化について、中崎は「数年前と比べて自発的に練習だとか、どうすれば良くなるとか、そういう取り組みを自分から行動に移してできるようになってきたなと思いますし、そういうことの継続がやっぱり結果につながってると思います」と分析した。

「塹江と一緒に1軍でやれれば一番良いんですけど…。あとは僕が頑張るだけなので。良い刺激にはなってますね」。広島で9回のマウンドが一番似合う男。完全復活で定位置への返り咲く姿を楽しみに待ちたい。【広島担当 古財稜明】