<西武2-0オリックス>◇8日◇メットライフドーム

レジェンドユニホームの背番号「13」を背負った西武高橋光成投手(23)が、9回にノーヒットノーランを逃しながらも、被安打1で初の完封勝利を果たした。8回までオリックス打線を無安打投球。9回先頭の西野に中前安打を許した。同じ13番を背負い、9回2死から打たれた経験が2度もある西口投手コーチのリベンジとはならなかった。それでも後続を断ち切り、今季5勝目を挙げ、次期エースの風格を漂わせた。

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胸の内に熱いハートを秘めた男だ。17年オフ、野球教室にいく道中だった。自家用車が煙を出して横転していた。高橋光は同乗していた相内、佐野とともに駆け寄った。まずはドアを外しエンジンを切った。そして意識がもうろうとする運転手を、車からゆっくりと救出。高橋光は回想しながら「運転免許をとったときの講習とかを思い出しながらでしたね」。3人で、近所の住人に呼びかけ、用意された毛布で包んで固定。救急車が手配されたことを確認し、その場を託した。

目の前で突如起こった危機的状況に、瞬時に反応。「もう必死でした」と振り返るが、焦る気持ちを抑えながら頭は冷静に、そして的確に処置を施すことは、決して容易ではない。そして月光仮面のごとく立ち去る潔さ。マウンドで打者と対峙(たいじ)しピンチを迎えても、9回にノーノーを逃しても、“火消し”に徹する姿勢は、いつも同じ。「今日みたいなピッチングがずっと、多くできるようにしたい」。マウンドでの救出劇はまだまだ続く。【西武担当=栗田成芳】

西武対オリックス 9回表オリックス無死、代打西野に中前打を許し、ノーヒットノーランを逃して肩を落とす西武高橋光(手前)(撮影・河田真司)
西武対オリックス 9回表オリックス無死、代打西野に中前打を許し、ノーヒットノーランを逃して肩を落とす西武高橋光(手前)(撮影・河田真司)