ソフトバンクが堂々たる「王者」として2021年シーズンを迎えることになった。昨年は未曽有のコロナ禍に見舞われながら、3年ぶりのリーグ制覇。そして再び激突した巨人との日本シリーズではこれまた2年連続の4連勝でV4を達成。まざまざとホークスの「強さ」を見せつけたシーズンだった。

王球団会長は言う。「選手たちにとって勝つということが特別じゃなくなった。勝利に対する意識が高くなった」。チームを見守る王会長の気持ちは年を重ねるごとに「確信」となってきている。「ことさらこちらから、どうしろ、こうしろと言うことはなくなった。自分たちでやれるようになってきたからね。こうなればしめたもんですよ」。試合に臨む準備、練習の取り組み、勝利への執念…。監督時代から厳しく教え込んできた「王イズム」がまさに開花したと言っていい。「チームがこういう風になるまでが大変なんだよ。いったん、たどり着いたら、あとは選手たちがやってくれるからね」。先輩に引っ張られるように若手も奮起し、お互いが強烈なライバル心を燃やしながらチーム力を高める。いわゆる好転のサイクルで円熟期に入ったといえる。

とはいえ、「今」にあぐらをかくわけにもいかない。巨人V9を超える「V10」をチーム目標に据え、孫オーナーは早くも「シリーズ5連覇」指令をチームに飛ばした。野手陣の世代交代という課題も抱えながら新シーズンに挑まなければならない。「育成」と「勝利」-。二律背反の命題は強いからこそ、厳しさも伴う。千賀、甲斐、石川、周東、牧原、大竹ら育成選手出身者が1軍で活躍。「育成のホークス」と球界では呼ばれているが、ファームからの突き上げはこれまで以上に望まれるところだ。この好循環が足踏みすればV5すら絵に描いた餅になってしまう。

そんな危機感の表れでもある。OB小久保をヘッドコーチで呼び寄せ、さらなる野手強化へ1軍から3軍まで貫通した体制作りを目指している。かつて巨人、西鉄などで監督を務め「球界の魔術師」と呼ばれた三原脩氏は言った。

「覇権を握ることは難しい。覇権を持続することはさらに難しい。しかし、1度失った覇権を奪回することは、さらにさらに難しい」。

強さに甘んじない「強烈な危機感」が今シーズンのホークスのキーワードとなる。

【ソフトバンク担当 佐竹英治】