初めてのプロ野球取材。記者として、私情を挟まないことが大前提だ。だが、ヤクルトのジャージーを着た古田敦也氏(55)を初めて見た瞬間、心が高ぶり、一野球ファンに戻ってしまった。07年の退団以来14年ぶりの“現場復帰”。5日から臨時コーチとして指導を始めた。「あんまり変わっていなくて、非常に居心地のよさは感じています」と、現役時代を懐かしみながらグラウンドへ。自らマスクをかぶったり、打撃投手を務めたり、ノックを放ったり…。笑顔を絶やさず、精力的に動きまわっている。

ノムラの教えを次世代へと受け継がせる。「僕は野村監督からかなり影響を受けていますから。お話ししている半分は野村監督の受け売りもありますからね。受け売りというと言葉が悪いけど、それを継承していくことが僕の仕事でもある」。特に力が入るのはバッテリーの強化だ。技術指導はもちろん、宿舎ではバッテリーミーティングを複数回にわたって開催。球界の頭脳の内側を惜しむことなく伝えた。ミーティング後は中村、西田、古賀、松本直の4捕手を呼び出した。「とにかくお前らが本当にその気になって、この投手陣を引っ張らなくちゃいけないんだから」とハッパをかけた。捕手で勝つ。強いスワローズの復活へ。OBとして、ID野球の申し子が力を貸す。

守護神として古田臨時コーチと4度の日本一を経験した高津監督は「いろんな角度でスワローズを見てこられた方。また大きな指導力でチームを立て直してくれる。僕の中で大きなピースだと思っているので、非常に頼りにしています」と大きな期待を寄せる。臨時コーチの任期は、11日までの予定。偶然にも野村氏の一周忌と重なる。今年こそは天国で見守る名将に優勝を届ける。愛弟子たちが、チームを立て直す。【ヤクルト担当 湯本勝大】

2月6日、ランチ特打で打撃投手を務める古田臨時コーチ
2月6日、ランチ特打で打撃投手を務める古田臨時コーチ