短い髪は成り上がる決意の表れだ。「キャンプ前に切ってきました。横は1ミリに刈り上げてます」。阪神小野寺暖(だん)外野手(22)は、大事な日を迎える前に髪を短く切りそろえる。大商大時代の負けられない試合、そして19年育成1位で阪神に入団した時も、丸刈りにした。目に見える形で自らに気合を入れる。

1軍キャンプに参加した野手では唯一の育成選手だが、7日の紅白戦では谷川から21年のチーム1号本塁打を放った。チームメートにいじられながら、ムードメーカーとしての存在感も光る。「いいスタートを切ったんですけど、そこからあまり目立った活躍をしていないので、1軍に帯同してもらえてる間に、できるだけのアピールをしたいです」。キャンプも残りわずか。目標の支配下に向けて、気合を入れ直した。

いつも、実力と強い気持ちでのし上がってきた。「中学校も高校も僕だけ無名で、周りは有名な選手ばっかり。やってやろうという気持ちはずっと持ち続けてやってきているので、得意というか、常にその気持ちを持っています」。大商大では同期のヤクルト大西、中日橋本が1年時から試合に登板した一方で、小野寺がレギュラーを取ったのは3年春。そこから首位打者やベストナイン、MVPと破竹の勢いで活躍し、プロの世界にたどり着いた。

今年の年始は大阪・箕面市の勝ち運の寺「勝尾寺」に大西、橋本と初詣に訪れた。大商大1年の時から野球部全員で行くのが恒例で、プロに入ってからも毎年行こうと、3人で決めている。会話に花を咲かせながら、昨季1軍戦に登板した2人から、いやなバッターの共通点も聞き出した。「(2人は)常に上を行って、僕の前を行ってるので、最後この舞台で、前を走れるようにしたいです」。培ってきた根性でプロの世界を駆け上がる。【阪神担当=磯綾乃】

ドラフト指名されガッツポーズする左から中日2位大商大・橋本侑樹、ヤクルト4位大西広樹、阪神育成1位小野寺暖(2019年10月17日撮影)
ドラフト指名されガッツポーズする左から中日2位大商大・橋本侑樹、ヤクルト4位大西広樹、阪神育成1位小野寺暖(2019年10月17日撮影)