<日本生命セ・パ交流戦:中日3-3ソフトバンク>◇27日◇バンテリンドーム

ソフトバンクが名古屋で勝てなかった。中日との3連戦は2敗1分け。3点差を追いつかれ、ドローとなった。2戦目は8回に柳田の1発で2点を追いつきながら、その裏に泉-海野のバッテリーが阿部に決勝弾。痛い連敗を喫した。まだ生々しく記憶は残っている。3戦目も同点で8回を迎えた。2戦連続で泉がコールされた。女房役の甲斐は泉の腰をポンとたたいてマウンドに送り出した。

ビシエドを空振り三振、高橋周を一ゴロ。簡単に2死を取って2四球。一、二塁のピンチを招いたものの、代打福留を中飛に仕留め無失点で「魔の8回」を払拭(ふっしょく)した。マウンドの泉もそうだが、マスクをかぶった甲斐はさらに必死のリードだったろう。前日(26日)は7回に代打を送られ途中交代。ベンチから敗戦を見届けた。「正捕手」にとっては屈辱の2文字しかなかったろう。3割を超えていた打率も中旬から急降下。直前3試合は9打席で5三振。快音どころか、バットも空を切っていた。

考えてみれば「捕手」とは難儀なポジションだ。ホークスOBでもある野村克也氏はよく言っていた。「好投すれば投手の手柄。打たれれば捕手の責任」-。雪辱の気持ちは強かったはずだ。甲斐は初回に3点目となる左前適時打を放った。4試合ぶりのヒットだった。6回にも2死一塁から右前打した。久々のマルチヒットも笑顔の要素にはならないところが捕手の宿命か。ノムさんと同じ背番号「19」を引き継ぐ男にとって手に残るバットの感触より、4回に木下拓に同点3ランを許した1球に悔いを感じていることだろう。日本一5連覇を狙うチームにとって「扇の要」である甲斐は最大のキーマンと言っていい。いつまでも下は向いていられない。【ソフトバンク担当=佐竹英治】

中日対ソフトバンク 1回表ソフトバンク2死一、二塁、左前適時打を放つ甲斐(撮影・森本幸一)
中日対ソフトバンク 1回表ソフトバンク2死一、二塁、左前適時打を放つ甲斐(撮影・森本幸一)