日本中に東京五輪ムードが漂う中、シーズン中断中の野球界では変わらぬ時が進んでいる。

楽天石井一久GM兼監督(47)は10月11日のドラフト会議に向け、候補選手のチェックにいそしむ。「オリンピックも見ますけど、高校野球の方が見るかな、自分の優先順位としては。スカウティングはしてくれているので、その辺の答え合わせ、方針を出していきますね。高校野球が終わるくらいにある程度、材料がそろってないと、議論ができないので」と目を皿にする。

GMに就任し初のドラフトとなった18年で辰己、太田、19年には小深田、黒川、滝中、昨年は早川ら、チームの未来を担う若手選手を次々に指名している。常々に言葉にする「短期」と「中長期」の成果を追い求めるために、骨格作りへドラフト会議での戦力整備は年々重要度を増している。

高校生において今ドラフトの目玉はノースアジア大明桜(秋田)の風間球打(きゅうた)投手(3年)。最速157キロを誇る右腕に指揮官は「大学、社会人でもたくさんいいピッチャーはいますよ」と前置きし「前回(準決勝)もいいボールをすごく投げてたし、あの辺は別格ですよね」と高く評価する。

新人選手を語る上で“即戦力”かどうかの議論が多く見られるが「あまり高卒とかは関係ないと思う。大学、社会人卒だと無難に即戦力を取りに行ったと思われちゃうんですけど、あまりそこは無難に、というあれはないですね。どちらかというと27歳あたりの青写真を見てるので」と持論を広げる。取材中、偶然通りかかった3年目の辰己を指し「まだまだこれから。5年目が終わった時に一流というか、バリバリのレギュラーになってくれれば」とさらなる成長に計画的な期待を膨らませる。

言わずもがな、グラウンドに立てば年齢や実績は関係ない。結果を出すか、出せないかで立ち位置や将来が変わってくる。数年間のスパンで見据えながら、目の前の1勝ももぎ取るために最善を尽くす。中断期間中の練習ではバントや盗塁練習も挟まれ、後半戦へ向けた準備も進む。「GM兼監督」との肩書がよりいっそう存在感を増してきた。【楽天担当=桑原幹久】