ヤクルト塩見泰隆外野手(28)が効いている。2位巨人と0・5差の3位につけ、首位阪神を射程圏。開幕前はファンや評論家の間で下位予想が多数を占めた。好調の要因は-。キーマンに1番塩見を挙げる。

打率2割9分1厘、8本塁打、33打点。リーグ3位の18盗塁とチャンスメークにも貢献する。打撃でも足でも存在感を見せているが、一塁走者時の“走らない力”に注目した。相手投手からしてみれば無視できない快足の持ち主。走るだけが走者の仕事ではない。

「警戒というのはされてくると思うので、そこを『走るぞ走るぞ』という感じでプレッシャーを与えれば、ピッチャーも投げづらいでしょうし。クイックを意識しないといけないし、ワンバンになりすぎると走られるもあるし。そこはすごく意識している。走れないピッチャーもいるんですけど、そういう時もいかに走るか、『すぐに走るよ』というそぶりをしていくと、相手バッテリーにプレッシャーをかけられる。そこは大事にしています」

象徴的だったのは、18日巨人戦(松山)。1点リードの5回無死、左前打で出塁した。一塁上で直江のモーションを盗んでいたように見えたが、盗塁を試みず。けん制を引き出すなど、直江に警戒させた。青木の四球を呼び込み、無死一、二塁とチャンスを広げた。結果的に得点に至らなかったが、この積み重ねが得点や勝利につながる。この場面を塩見が振り返った。

「下(グラウンド)のコンディションとか、自分の足のコンディションとか、ピッチャーとかキャッチャーを総合して。あそこは走るというよりはプレッシャーをかけたいなと思ったので、戻り重視のプレッシャーをかけることに重点をおいた」

後には青木、山田、村上、オスナと好打者が続く。「本当はドカーンとホームランを打ちたい」と笑うが、出塁に徹する。走者としての仕事で投手が投げにくく思わせられれば-。制球が乱れたり、失投を引き出せる可能性もある。打者と投手の1対1の戦いではない。一塁上の駆け引きで、頼もしい中軸たちを援護する。【ヤクルト担当=湯本勝大】