あれから1カ月がたった。9月7日。横浜スタジアムで巨人菅野が先発マウンドにあがった。自主トレに同行していたDeNA宮国との投げ合い。ともに復活を期すかつての戦友と胸を突き合わせた。時折、首をかしげる苦しい投球内容を強いられた。108球。4回1/3、7安打7失点、5四死球でKOされた。完全復活には至らなかった。

前回登板の9月1日ヤクルト戦では8回1安打無失点。復活の兆しをつかんで臨んだ一戦だった。4カ月以上ぶりに勝利をつかみ「いろんな人がこの登板に携わってくれた。どうしていいか分からない時期もあったけど、誰もが順調に野球人生を最後まで歩めるわけじゃない。それが今、来たんだと自分自身に言い聞かせて現実を受け止めてやってきた」と言った。

8月7日。横浜スタジアムで東京五輪決勝を戦った24人の侍たちが列島に感動を与えた。5戦全勝で悲願の金メダルを獲得。同大会でエースとして期待されていた菅野はコンディション不良を理由に辞退した。「まあ…、悔しさだけですね。悔しいし、どうにも出来ない感情と。言葉では簡単に力に変えるとか言いますけど、そんなに簡単なものではなくて、まあ苦しくつらい思いもしましたけど、もっと苦しい思いも待ってるかも知れない。負けてられないなという気持ちです」。歓喜の陰で孤独に己の体と向き合う日々に明け暮れた。

五輪金メダルのマウンドは、またしても菅野に試練を与えた。不本意な投球内容に言い訳する気はない。「ゲームをつくれなかったので、次の試合はつくれるように頑張ります」とだけ言った。昨季はプロ野球記録の開幕投手から13連勝をマーク。平成生まれ初の通算100勝にも到達した。大エースとして球界のど真ん中を堂々と歩んできた。今季は3勝6敗にとどまる。このまま終わる気はない。【巨人担当=為田聡史】