普段はDeNA担当の野球記者だが、趣味と実益を兼ねて株式取引をしているため、経済ニュースにも興味はある。最近、経済紙や経済番組などでよく見る言葉が「NFT」だ。ベイスターズ球団が、こちらの新サービスを開始するというので、取材してみた。

NFTとはNon Fungible Tokenの頭文字で「非代替性トークン」と訳される。訳語を見ても意味不明かもしれない。「偽造不可な鑑定書、保有証明書付きのデジタルデータ」。シリアルナンバー等をつけて、発行量(コピー量)を管理できるようにした、画像、動画、音声などデジタルデータなどを指している。「トークン」とは「しるし」などのことで、26年前に渡米した時は、ニューヨークの地下鉄では入場コインをトークンと呼んでいた。

DeNAは30日から試合の動画を「トークン」として使用し始めた。「PLAYBACK 9」と題したサービスだ。動画に120円、480円。980円、1980円と4種類の価格をつけて売り出す。120円なら犠飛、ファインプレー、1980円ならサヨナラ打のシーンといった具合だ。それぞれの動画は、シリアルナンバーを入れて500本の限定販売となる。500以上の注文が入った場合は、抽選となる。

素朴な疑問がわいた。今やDAZN(ダゾーン)やYouTubeなどのサービスを利用すれば、過去の試合動画を見ることは可能ではないか。わざわざお金を払って、1シーンの動画を買う人がいるのだろうか? 担当者の説明は「新しい概念になる。サインボールやタオルと同等。識別コードで自分のグッズとして扱う」だった。

単なる動画販売と違うのは、将来的に、ユーザー間で転売を可能とする予定である点だ。しかも、価格はユーザー自身で決められる。絵画などでNFTが注目されているのは、発行数の上限が決まっている上で、転売可能だからだ。ビットコインなど暗号通貨と同じ、ブロックチェーン技術が使われている。現時点では「PLAYBACK 9」内での売買が予定されているが、将来的には売買プラットフォームが広がる可能性もある。

球団としては、実物の野球カードに代わって、スマホに入る、デジタルでのトレーディングカードをイメージしているようだ。NFTの取引は急拡大しており、バスケットボールのNBAでは、シュートシーン動画が2次流通を含み、1年弱で約760億円も売り上げたという(出典coindesk JAPAN)。

私は小学校時代から高校まで、プロ野球カードを収集していた。小学生の息子は現在、カードが付いているプロ野球チップスに夢中だ。もう少し大きくなってスマートフォンを買い与えたら、動画収集に精を出すのだろうか。そして、MLBのホーナス・ワグナーの野球カードのように、取引価格が数億円となる動画が生まれるのか。これまでプロで犠打がない、宮崎敏郎内野手や佐野恵太外野手が来季に送りバントをしたら、レア動画として2次流通市場で高い値段がつくのだろうか。動向を見守りたい。【DeNA担当=斎藤直樹】

DeNAは、試合の動画をNFT(Non Fungible Token=非代替性トークン)で売りに出す(球団提供)
DeNAは、試合の動画をNFT(Non Fungible Token=非代替性トークン)で売りに出す(球団提供)
DeNAは、試合の動画をNFT(Non Fungible Token=非代替性トークン)で売りに出す(球団提供)
DeNAは、試合の動画をNFT(Non Fungible Token=非代替性トークン)で売りに出す(球団提供)