このコラムも担当分が今年最終回なので、DeNAの現場取材で感じた「2021年のベイスターズ、個人的に刺さった発言、出来事8選」をお届けする。特に重大事象だけを選んだわけではないので、あしからず。

◆阪口皓亮投手「女手ひとつで3きょうだいを育てていただいた恩がある」。4月4日の広島戦でプロ初勝利を挙げ、母京子さんにウイニングボールを贈ると決めた。「育ててもらった」ではなく「育てていただいた」という21歳の若者らしからぬ言葉遣いに、同世代の子を持つ親として感動した。ちなみに、東京五輪期間中に「あんまり見てないですね。ちょっとポケモンカードに集中してるので」と話す一面もある。高田琢登投手と中川虎大投手がポケモンカード仲間。

◆今永昇太投手「こういう梅雨の時期なので。皆さんも日本の四季を楽しんでいただけたらと思います。以上です」。5月20日、1軍復帰登板が雨天中止となり、取材の冒頭で繰り出したひと言。ユーモアに富んだ発言は、単なる頭の良さだけではないサービス精神を感じた。

◆坂本裕哉投手「直属の幼稚園の先輩」。7月13日の阪神戦で7回1失点と好投し、3勝目を挙げた。前日の試合で三嶋一輝投手が4失点しサヨナラ負けしていたが、「直属の幼稚園の先輩がやられていたので、やり返したかった」と仇(かたき)を取った。「直属の先輩」は高校や大学ではよく聞くが、幼稚園とは新鮮だった。ちなみに福岡市の「周船寺第2幼稚園」とのこと。

◆牧秀悟内野手&田代富雄巡回打撃コーチ「眉間にしわを寄せてボールを見ない」。開幕直前の3月24日のナイター練習後、牧は「キャンプの時は球が見えづらかったけど、オープン戦で少し見やすくなった。形は変えずに、ボールの見方をちょっと変えた。『眉間にしわを寄せて、集中して見すぎない』。見すぎると力が入るので、リラックスできる。田代コーチに教えてもらいました」。キャンプ後半の不振から、オープン戦で復調した要因を語っていた。

ところがシーズン終了間際の10月21日の練習後、田代コーチが衝撃(笑劇?)発言。「俺は眉間にしわを寄せろと言ったんだ」。聞き間違いか言い間違いのどちらかが判明したが、牧はプロ野球の歴史に残る好成績を残しただけに「ああそう。あいつじゃあ間違って聞いていたな。間違ったのがよかったんだ」と高らかに笑い飛ばした。どちらが間違っていたかは不明だが、牧はその後、2年目野手として史上最高額の推定年俸7000万円で契約更改した。選手から慕われる名伯楽による豪快指導の一端を見た。

◆伊勢大夢投手「おはようございます」。9月11日のヤクルト戦で試合前にノックを受けている九州学院高の2学年後輩、村上宗隆にあいさつ。村上は上から目線で「おはよう」と返答。あっけにとられている記者の視線に気付いた伊勢は「いつもこんな感じです」と、自虐的なトーンでお約束のやりとりだと説明した。

◆佐野恵太外野手「どの口が言ってんだって感じですけど(笑い)」。10月8日の中日戦でプロ初の1試合2発となる15号&16号。9月30日に牧が20号に乗せた試合で「よく佐野さんには『10本台と20本台はだいぶ違うよ』と言われた。18本目ぐらいから意識し始めた」と告白。この助言を記者から問われ「あんまり言った記憶ないんですけど(苦笑)。僕がまだ20本打ってないんでね」と話した後、冒頭の言葉が飛び出した。

◆京山将弥投手「誰かの影響で変えたような気がするけど、覚えてない」。天然系の右腕が10月15日の練習でぽつり。マウンドの立ち位置を2年前に三塁側から真ん中に変えたのだが「いやあチームの人なのかテレビで見たのかYouTubeで見たのか忘れました。変えたのは覚えてます」。

◆益子京右捕手「後から映像見たら、自分で見てても緊張してるなと分かりました。心臓が服の上から分かるぐらいドキドキしましたね」。10月23日の中日戦でプロ3年目にして1軍初出場。どのくらい緊張したのかを端的に説明した。

私事で恐縮ですが、DeNA担当としてコラムを書くのがこれが最終回となります。1年間ありがとうございました。【DeNA担当 斎藤直樹】