キャンプ最終日の事件だった。オリックス宮城大弥投手(20)はチームバスが出発したにも関わらず、ぼーっと誰かを待っていた。

「ロッカーの掃除を一緒にやってほしいと、お願いされてしまって…。それで、ここでずっと待っているんです」

球場横の階段で、待ちぼうけ。5分ほどすると「おーい!こっち、こっち!」と呼び出された。

朗らかな声の主は、エース山本由伸投手(23)だった。キャンプ総括のインタビューを受け、そそくさと投手陣が使用した小屋の方へ走る。18番の背中を追うように、宮城も駆け足。じーっとこちらを見つめて「ほら!ちゃんと書いててくださいね…」と“記事化”を要望。宮城が背負うリュックについているジャニーズの「なにわ男子」藤原丈一郎のぬいぐるみの大きな瞳が、こちらに訴えかけてくる。

10分ほどすると、片付けを終えた2人が戻ってきた。山本は笑顔で宮城を指さし「舎弟です~!」と爆笑。昨季の沢村賞右腕は、新人王左腕を“パシリ”に任命。さすがに私物の「お片付け」は、任せる側も、任される側も、信頼関係がないと受け入れない。

左右の両輪が醸し出す、ほんわかした雰囲気…。昨季王者の強さは、自由度の高さなのかもしれない。【オリックス担当=真柴健】

オリックス宮城大弥(2022年2月24日撮影)
オリックス宮城大弥(2022年2月24日撮影)