ソフトバンク井上朋也内野手(19)の猛アピールは、藤本監督が本当に求めていた「競争」の始まりだった。

高卒2年目の19歳が、8日の巨人戦で2安打5打点1本塁打。「若手最終テスト」と位置づけられた同試合で「最終テスト、延びてしもうたね」と指揮官に言わしめた。今のチームは世代交代もテーマ。声を弾ませたのもうなずける。

井上は春季キャンプからバットでアピールを続けていたが、決め手に欠けていた。やはり魅力的なのは高校通算50発のポテンシャル。ベテラン松田や大砲候補リチャードとの三塁争いに勝つためには、ホームランが分かりやすい結果だったかもしれない。同試合で3点二塁打を放った際には、珍しく満面の笑みでガッツポーズを決めていた。プロ1年目の昨季は夜遅くまで寮でバットを振り続けた。1軍でもまれ、疲労困憊(こんぱい)のなかで見た景色は最高だったに違いない。

翌9日の巨人戦では、発奮したかのようにリチャードが適時打、松田がマルチ安打。井上の活躍で両選手の尻に火がついた。指揮官も「火がついたと思いますよ」と振り返った。さらに2軍本拠地のタマスタ筑後では、井上と同期入団の牧原巧が「僕は何をやってるんだろうって感じですよね…」と話していた。あの日の井上の活躍は、確実にチームに好影響をもたらしたと思う。【ソフトバンク担当=只松憲】