気迫の投球で、ナインを鼓舞する。オリックス阿部翔太投手(29)の気持ちを込めた投球が、チームに勢いをもたらしている。

21日ソフトバンク戦(京セラドーム大阪)では、2点ビハインドの9回に4番手で登板。2死一塁から代打の上林を空振り三振に仕留め、ガッツポーズで雄たけびを上げた。

「あの場面として、得点を追う立場での登板だった。僕が失点しなければ、まだ全然チャンスはある。自分の役割を考えたとき、流れを持ってこられるような投球がしたいと思ってマウンドに向かいました」

1回を無失点の奮投で、直後の攻撃につないだ。9回裏。打線は阿部に応えるように同点に追い付き、延長11回に紅林がサヨナラ打を放った。阿部も、歓喜のウオーターシャワーを浴び、笑顔の輪に加わった。

20年ドラフト6位で、日本生命からオリックス入団。入団時は28歳。球団新人最年長だった。日本生命時代には、都市対抗に4度、日本選手権にも4度出場。短期決戦の経験は豊富だ。

「社会人時代は、負けたら終わりの1試合ばかり。だから、今もその感覚はあります。僕の立場は、1試合1試合で全てが決まる」

3つ目のアウトを奪い、ガッツポーズで叫ぶのも無理はない。

「周りから見たら、2点負けてての登板で、あそこまで気合が入るか? と思うかもしれないですけど…。僕は1試合1試合、負けたくない。自然と出ましたね」

えくぼができる温和な表情でぽつぽつと語った。新人年の昨季は途中で右肩の肉離れを起こし、リハビリ生活。1軍登板は4試合に終わった。だから、気合の度合いが違う。

「去年、本当に何もできなかった悔しさがあります。(チームは)優勝しましたけど、僕はリハビリ中で、家のテレビで見ていることが多かった。今年にぶつける思いは強いです」

投手交代を告げられると、鼓動が高鳴る。

「良い投手が(チームに)いっぱいいる。今年は1軍定着したい。与えられた場所で、何を求められているのかを考えたい」

24日ロッテ戦(京セラドーム大阪)では、救援で2回無失点。4三振を奪い、中嶋監督から「本当によかったです。よく投げてくれました」と評価された。

接戦、ビハインド、ロングリリーフ…。持ち場はどこでも構わない。1勝の重みを知る右腕が、今日もブルペンでスタンバイする。【オリックス担当 真柴健】