今年もドラフト会議が終わった。毎年、候補生本人のみならず、家族や友人たちにとっても大事な1日、緊張の1日だ。

20日夜、黒川敏行さん(57)は福島・学法石川高校の近くの駐車場にいた。外は暗い。夫人、次男と3人、車の中でスマートフォンを眺めていた。

「育成でも、ということで希望して。ドキドキしながら。調査書、ロッテさんだけで。指名される確率はそんなにかなと思っていましたし、その前に内野手も多く指名していたので」

やっぱり…。そんな時、電話が震えた。スマートフォン中継はやはり、タイムラグがある。関係者からの着信。息子・凱星の指名を伝えられた。3人だけなのに「もう車じゅう、大騒ぎで」。直後、スマホ画面に子どもの名前が出た。

育成4位、千葉ロッテ、黒川凱星、内野手、学法石川高校。

「もう、うれしさを抑えられないですよね」。直後に息子とも顔を合わせた。意外に冷静。「親の方が興奮してましたよ。親にとっても大変な場なんだな、とつくづく感じました」。

自身も千葉商大付で投手を務め、出場はなかったが82年センバツで甲子園に出場した。1つ上の投手がロッテでもプレーした平沼定晴氏。「カバン持ちみたいな感じで、いつも一緒にいて。平沼さんが中日にドラフトされて、よし来年は自分も! と思ったんですが、現実を知りました」。今は東京学館船橋(千葉)で野球部監督を務めている。

夢を託した長男は、小学校ではマリーンズジュニアに選ばれ、中学では京葉ボーイズで春夏連続で全国制覇。佐々木順一朗監督を慕い、福島へ越境進学した。たくましくなった姿を、頼もしげに見つめる。この日は家族で福島に出向いた。「もし指名されなかったら、明日が大学受験の願書の締め切りで」。運命はプロ野球へとつながった。

「何か1つ、魅力ある選手になってもらえれば。全部は望みません。何か1つ、秀でてくれれば。最高レベルでプレーできるチャンスをもらったので、感謝して頑張ってほしいです」

走攻守がしっかりとそろい、何か1つ身につければ大化けも。実家はZOZOマリンが5キロほど。たくましくなって、戻ってくる。【ロッテ担当 金子真仁】