スカウトがチェックするのは、結果だけではない。もちろん可能性を感じる資質が必要なのは当然だが、その着眼点の広さに驚く。

西武が育成4位で指名した法大・是沢涼輔捕手(22)。その魅力を強肩に加えて、担当の竹下潤スカウト(53)は言った。

「野球に対する姿勢ですね。キャッチャーはいろんな投手の球を捕るので、彼は一番大事なものを持っていると思う」

是沢は東京6大学でのリーグ戦出場は4試合、3打数0安打だった。高崎健康福祉大高崎でも控え。実績はなかった中での指名だった。

知ったのは今春になる。竹下スカウトは「いつグラウンドに来てもバットを振っている」と当時を回想する。試合に出ている選手ではなく、名前は分からない。ただ、いつも目につくから、だんだん気になる存在となった。「あの22番何者なのか?」。自然と興味がわいた。調べていくうちに、まずポジションが捕手であると知った。チェックすると、肩は抜群に光るものがあった。「一芸」と言えるに十分な強さだった。

その興味はグラウンドを訪れるたび、増していった。「ブルペンでも大きな声を出して捕っている」。広いグラウンド、数多くの部員がいる中でも、自然と光るものがあった。チームに好循環、何かいいものをもたらしてくれるではないか。そう思える、確かなものがあった。

指名あいさつの場でも他の選手とは違った姿があった。是沢はメモ帳を手に質問を重ねていた。これには08年の就任以来、数々の主力を担当してきた名スカウトも「初めてですよ。指名あいさつにいった時、メモ帳を出して質問されたのは。それだけでも何か分からないですか?」と驚かされた。そして「きっと2桁背番号を勝ち取ってもらえるキャッチャーになってもらえる。西武ライオンズの何かを変えてもらえるのではないか」と期待を込めた。

毎日の練習に真摯(しんし)に取り組んでいる姿を、誰かが見ていた。それでつかんだプロ夢の舞台。成り上がりはなるか。是沢は「自分はスローイングが売り。いつかベルーナドームで源田さんにセカンド送球を捕ってもらえる選手になりたい」と語った。【西武担当 上田悠太】