この秋、日本ハム新庄剛志監督(50)のBIGBOSSポーズに右手が多い理由を、初めて知った。ハンドサインは、ほとんど右手だ。「あまり指をさす時に、左手を使うことはない。この指、曲がってるから」。11月の秋季キャンプの練習後。開いた左手の人さし指の付け根には、大きな傷が一直線に刻まれていた。

「中学校の時に切って、今でも全然、指が伸びなくて」。左人さし指には、全く力が入らない。中学時代、丸のこ盤に指が巻き込まれたことが原因だった。皮1枚でつながっている状態で「骨とか見えて、神経も全部切れて。うわっ、野球終わった…。できないわ」。絶望した新庄少年を、父は「大丈夫。その指、関係なかろうが。グラブからも(人さし指は)出すやろ。バットも浮かせて握ればできるやろ」と、励ましたそうだ。

現役時代の握力は88キロの右手に対して、左手は72キロほど。アスリートとして見ても、突出した数字だ。とても、ハンディがあったようには思えない。左右の握力差があまり大きいと、体に“ゆがみ”が生じるというが、そんなことは新庄監督にとって取るに足りないことだろう。「これでも野球はできる。右手をケガしていても、左手に変えてやってますよ。方法はいくらでもある。この指(左手人さし指)が使えていたら、もっとバッティングが悪くなっていたかもしれない。プラス、プラス。何でもプラス」。そう言って、愉快そうに笑った。

「人さし指の秘密」を知ってから、新庄監督のBIGBOSSポーズを見返した。確かに、右手でポーズを作っていることが多い気がする。超ポジティブ思考は、すでに他界されたお父さまの影響が大きいのだろう。その明るさにシーズン中、何度も救われた。それはきっと、私だけではないはずだ。監督2年目の来季も、戦力的には厳しい戦いが予想される。困難な状況をプラスに変えようとするパワーを、我々番記者も信じたい。【日本ハム担当=中島宙恵】