2023年卯(う)年。吉井理人監督(57)がチャレンジした侍ジャパン投手コーチとの“二刀流”を終えて、ロッテに帰ってきた。

「世界で見ると野球はマイナー競技。今回はヨーロッパの東の方の国も出場した。少しは世界の皆さまに野球の楽しさを分かってもらえたかなと。日本国内でも今まで以上に野球の楽しさを知ってもらえたと思う。このままの勢いで日本を盛り上げたい」。

WBC優勝と普及の役割を果たし、これからはロッテの監督業に専念だ。帰国翌日の24日の中日戦では、36日ぶりに指揮をとった。だが、25日を含めて2日連続完封負けを喫した。「何をやっても結果が出ちゃうので、そこは日々、失敗したら改善という形でやっていく。結果を恐れていたら何も始まらないので不安は何もないです」。オープン戦でわずか3試合の指揮をとって、ソフトバンクと戦う31日の開幕戦に突入だ。

チームを離れている間も、朝からオンラインでつないでロッテのコーチ陣とのミーティングを継続していた。侍の空き時間にはオープン戦の映像をすべてチェック。深夜に及び、寝る時間を削らざるを得ない日もあった。

気力、体力を振り絞って“二刀流”期間を完遂し、「二兎(にと)追う者は一兎も得ず」の言葉はWBC世界一で覆した。だが、1つ気になることが…。今年1月30日に春季キャンプ地の石垣島入りした監督と、ほぼ毎日会話してきた記者としては「なんか、元気ないなあ」が本音だ。

吉井流トークにキレがない。佐々木朗のスライダーを「まだまだプー」と表現したり、一時は開幕投手に指名した石川への伝達方法を「12日12時12分12秒にテレパシーを送りました」と真顔で冗談を言ったり。ペルドモの入団会見では「東條(大樹)投手に似ているといううわさですが、東條より少し男前です」と侍ジャパン活動中ながらも報道陣にメッセージを届けたこともある。いろいろな言葉の力で選手の力を引き出すのも吉井監督の魅力の1つだと私は感じている

侍の世界一とロッテの日本一。「二兎追う者は二兎を得る」が究極の理想型。開幕からスタートダッシュを決めたいところだが、数々の“吉井語録”でチームを盛り上げてきた言葉が、まだ帰ってきていない気がしている。【ロッテ担当 鎌田直秀】