今シーズンは日本野球機構(NPB)の担当がメインだったため、球場に行って選手を直接取材する機会は多くなかった。ただ、限られた中でも印象に残ったシーンはある。

楽天の今季最終戦。地元・仙台にロッテを迎え、勝った方がCS、負けた方がBクラスという大一番だった。結果は完敗。2年ぶりのAクラスを逃した。

試合後、数人の選手が今季を振り返ってくれた。その1人が松井裕樹投手(28)。39セーブで2年連続セーブ王に輝いた。4月には史上最年少となる27歳5カ月で通算200セーブ到達。10月には500試合登板も果たした。それだけ聞くと、順風満帆な1年だったように思ってしまうが、周知の通り、3月のWBCでは1試合のみの登板にとどまった。

2月の宮崎合宿から取材したが、松井裕は例年とは違う条件での調整に苦労しているように見えた。そこからの39セーブ。何が可能としたのかを聞きたかった。

「技術うんぬんより、いろんな経験ができた2月、3月だったので。またシーズンに対しての入りとか、実戦とか少なかったですけど、なんとかチームの力になりたいっていう思いは大きくして(日本に)帰ってきたので。春先はちょっと波に乗れなかったですけど、なんとかこう無事にというか、完走できて、とりあえずよかったです」

2月、3月に思うように投げられなかったことも「いろんな経験」として糧にした。登板が限られたことで、むしろフォア・ザ・チームの思いを強くした。

逆境を、どう受け止めるか。苦しい立場にあるときの振る舞いこそ、人としての真価が問われる。松井裕の言葉に、そう思わされた。【古川真弥】