FAでオリックスへ移籍する西川龍馬外野手(28)にとって、12月上旬のイベントが最後の広島のユニホーム姿となった。多くのファンにとっては、11月23日ファン感謝デーが赤いユニホームの見納めだった。

シーズンオフ、移籍する選手のユニホームは売れ残る。だが、西川の広島のユニホームは11月、売り上げが上がった。それは特定の人物による大量購入があったからだ。11月下旬のある日、マツダスタジアム内のグッズショップに私服で姿を見せた男は、ユニホームが陳列された棚へ向かった。背番号5に「NISHIKAWA」と刺しゅうされたユニホームを指さし、言った。

「じゃあ、ホームを20枚と、ビジターを20枚」。

聞けば、同じ人物は数日前にも数枚を購入していたという。総額は数十万。購入したのは、西川自身だった。

「聞いたら、残ったものは処分されるということだったので、それなら買います、と」。

もうすぐ“古巣”となる、ユニホームを何のために大量購入したのか? と記者が疑問を巡らしていると、西川はおもむろに「いる?」と店員に問うた。「はい」と照れたような返答に、サインを記してプレゼント。さらに近くにいた球団関係者にも「いりますか?」と聞き「欲しい」と返ってくると自ら包装を外してペンを走らせた。

そもそも明確な購入理由があったわけではなかった。1年着用したユニホームが処分されることへのざんげか、球団への感謝か。そこにも明確なものはなかったかもしれないが、何か衝動的に駆りたてられたものがあったのだろう。「どうしよう、誰が欲しい人おるかな」。苦笑いを浮かべながら段ボールを抱えながら球場から姿を消した。新たに着用するネイビーの背番号7のユニホームの売り上げとともに、自ら購入した赤い背番号5のユニホームの行方も気になるところだ。【前原淳】