令和になって初めての夏。気になる野球人の今を伝えます。第1回は誰もが復帰を願うあの投手。

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「彼ら」はひと足早くシーズンの正念場を迎える。

楽天由規投手(29)も、その1人。リミットである今月末の支配下選手登録を意識しつつ、課題と向き合っている。昨年6月2日以来、新天地初の実戦登板となった5月17日のイースタン・リーグ西武戦で2回無失点。最速151キロも出た。直近の6月21日の社会人野球チーム相手では、3回7安打6失点。予定の5回を投げきれなかった。

5月17日、イースタン・リーグ西武戦に登板する楽天由規
5月17日、イースタン・リーグ西武戦に登板する楽天由規

「体重移動のタイミングであったり、だんだん僕の中で『ズレ』が生じてきている。それを試合の中で修正できなかった。肩の症状という悩みから技術的な悩みに変わってきているのは、僕の中で進歩だとは思う。ただ『結果を残さなければ』も正直あるし、ヤクルトでその繰り返しを4、5年続けてきたので。どこかで打破しなくては」

「焦りはある」と素直に付け加えた一方で、充実感もにじむ。プロになり、初めて違う球団のユニホームに袖を通した。新たな出会いが世界を広げてくれた。

「ヨシさん(佐藤義則投手テクニカルコーチ)には、キャンプのキャッチボールから付きっきりでチェックしてもらった。引き出しがいっぱいあるから、アプローチの仕方が増える。たとえば『手首が寝てる』というポイント1つでも『何で寝ているのか』から教えてくれる。だからイメージしやすい。探求というか、何でできないのか自分で理解することが、ちゃんとできている」

痛めた右肩に対しても「なぜ痛くなるか」という根源に目を向けてフォームを構築。下半身をしっかり使い、肩にかかる負担を分散する-。言葉にすればシンプルで、目指すところは同じでも、意識が差を生む。

「ヤクルトにいた時は、正直、まず試合で投げないことにはと思っていた。痛くない方法、出力が出るところを探して(試合で投げて)負担がきても、登板期間を空けてもらっている分、そこでリカバリーして次の試合に向けて投げる。受け身ですよね。自分で考えながら投げられているのは、変わった気がします」

生まれ育った杜(もり)の都で歩む再起の道。思いを問われれば、優しいまなざしが一気に熱を帯びる。

「一発勝負で少ないチャンスをものにしなければ、信頼は得られない。1度、戦力外になっている身。そういう意味では落ちるところまで落ちたというか、やるしかない。現役をやりたくてもできない人がたくさんいる。燃え尽きるまでやりたい。ただじゃ終われない。その中でイーグルスが声をかけてくれて、まして地元。これ以上ないやる気に満ちている。1軍で投げられるのがいつになるか分からないけど、そこでしっかり抑えて『由規を取って良かった』と言ってもらえることが、僕にとって一番うれしい言葉です」

強い覚悟で野球人生を切り開く。【亀山泰宏】