全国から選抜された高校日本代表20人が、いつもとは違う仲間と異国で奮闘した。結成から解散までの20日間、何を感じたのか。母校に戻った2人のサムライを訪ねた。

3日、U18W杯パナマ戦で右翼線に三塁打を放つ日本の森
3日、U18W杯パナマ戦で右翼線に三塁打を放つ日本の森

森敬斗内野手(3年=桐蔭学園)の意識に「国境」はない。象徴的な出来事が3つ、目撃されている。

<1>8月28日、成田空港。釜山行きの飛行機には、ニカラグア代表も乗り合わせた。搭乗前、西純矢投手(3年=創志学園)とともにニカラグアの選手たちと積極的に交流し、互いのSNSをフォローし合った。

<2>9月3日、パナマ戦。二塁へ進むと、雨が強くなり中断。台湾から派遣された二塁塁審に話しかけ、笑い合いながら雨に打たれ、再開を待った。

<3>6日、韓国戦。初回、自身の安打と犠打で二塁に進むと、自ら右手を差し出し、韓国の内野手と握手を交わした。

「普通に、自然にやっただけですよ」と森は真顔だ。<3>については少し意図もあった。

「国際大会で、少しでも試合をしやすい状況にしたかった。握手でそうならないかなと。特に韓国は日韓情勢が悪いのは分かっていたので。日本人はそこまで拒絶していないんだよ、という気持ちを示したかったのはあります」

しっかり握り返された手のぬくもりを覚えている。参加12カ国が一堂に会した宿泊先でも、森はたくさん英語を使った。「みんな同じ高校生。違いは何もない。アメリカとカナダはやっぱり体が大きいなって、それくらいです」。SNSを交換した相手も、どんどん増えた。ワールドカップ(W杯)では全試合で1番中堅を任された。「信頼を感じました」という。野球でも、日常生活でも生粋の切り込み隊長。どんな集団にいても、必ずリーダーシップをとるように意識して生きてきたという。

17歳。社会を見る目は濁りがない。「日本って、何かあると逃げるのが普通なところがあるじゃないですか。先頭に行くのが恥ずかしい。そう感じる人はいっぱいいると思います。だからこそ先頭に立ち、自分で責任もとれる存在でいたい」と最前線を選んできた。

逃げない。パナマ戦でのこと。日本ベンチのすぐ横でファンの男性が「もっと気持ち出せよ、ニッポン! 全然元気ないよ!」と怒鳴った。ベンチのほぼ全員が反応しない中、森は声の方向をじっと見つめ、一拍置いた上で「よし、みんなでやろうぜ」と引き締めた。時代が求めるリーダー像は変わり「グイグイ」だけではいけないことも分かっている。「ふとした瞬間の行動で『この人、いい人だな』って信頼してもらえるような存在になりたい」と日々励む。

進路決定は慎重だ。「最終的にプロ野球選手になりたいことは変わりません」と言う。抜群の身体能力以上に、生き抜くたくましさが光る。グローバルな人材は「また代表で戦ってみたい」と新たな夢を見つけた。(つづく)【金子真仁】