今年も多くの選手たちがプロの世界を去った。第2の人生へ踏み出す彼らを特集する「さよならプロ野球」を、全12回でお届けする。

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15年9月、楽天戦で力投する島袋
15年9月、楽天戦で力投する島袋

ソフトバンク島袋洋奨投手(27)は「ぼくの中では、野球にはもう限界が見えていました」と悔いなく現役引退を決断した。沖縄・興南で10年に春夏連覇を達成した左腕は中大を経て14年ドラフト5位で入団。1年目の15年に1軍で2試合登板した。だが17年8月に左肘を手術。18年から育成として契約し、今オフに戦力外通告を受けた。

ソフトバンク島袋の年度別成績
ソフトバンク島袋の年度別成績

11月に、球界を離れ一般企業の「アスリートビジョン」に就職することを決めた。同社は運動の際の疲労軽減やパフォーマンスアップにつながる「サポートギア」などを作るメーカーで、約80人のプロ野球選手が製品を愛用。ヤクルト村上が来季からNPBでは第1号となるアドバイザーに就任した。島袋は現在、都内や横浜市内の販売店舗に立ち業務に当たっているほか、その村上のサポート担当も務めることになる。

「野球しか知らなかったので、毎日がいっぱいいっぱいという感じです」。商品を求めて店舗を訪れる来客の接客や、事務作業など慣れないことばかり。「野球での体力的な疲れ方とは、全く別の疲れ方ですね」とゼロからの再出発で日々、学びの生活を送っている。

野球界に残らずに、あえて「不安だらけでした」という道に進んだ背景には故郷への思いがある。「家族のこともありますし、将来的には沖縄に帰りたい。今すぐに沖縄に帰ってしまったら、もう外には出てこないだろうと思う。その前に、野球以外のところも見て、大きくなって帰りたいんです」。自分を育んでくれた沖縄への恩返しのためにも“アウェーの地”で汗をかいている。【山本大地】

19年ソフトバンク退団選手(※は育成)
19年ソフトバンク退団選手(※は育成)