野球を心の支えとし、新型コロナウイルスに正面から立ち向かっている方々がいる。「つなぐ」と題して市井の思いを送る。飾らない言葉を通すと、野球が持つ本質の魅力が浮かんでくる。

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彼女には、いま会いたい野球仲間がいる。「なんてかわいい人だろう」が第一印象だった。同じ北海道民で、ともに医療関係の仕事。そしてロッテファン。もともと休日がなかなか合わず、札幌ドームでの試合で会うことも難しい。

女性(本人)は仲間たちとロッテを応援できる日を待ちこがれている(本人提供)
女性(本人)は仲間たちとロッテを応援できる日を待ちこがれている(本人提供)

コロナ禍は、北海道でも各地に広がった。薬剤師の彼女にとっても、普段とは違う業務や環境に、ストレスは多かった。患者とのやりとりも、いつもより2歩後ろ。「毎日をむなしく感じていました」。緊急事態宣言が解除され、元気かなと、久しぶりに連絡をとった。娘と近い年頃の野球仲間の、告白を聞いた。

「職場は感染症の指定病院で、私はICUの看護師をしていました」

ICU、集中治療室。知らなかった、そんな最前線にいたなんて-。陽性患者にも多く接した友の言葉を、静かに受け止める。

「看護師として思うことの前に、やっぱり1人の人間として思うことのほうが多くて。今も思い出すと、涙が出てきちゃうんですけど…。最初は分からないことばかりだったし。自分は仕事として患者さんに関わるけれど、それで周りの大切な人たちに感染させてしまったらどうしようとか…本当は看護師として思っちゃいけないことだと思うんですけれど…。でも、患者さんのところにいくと、患者さんにもやっぱり大切な人たちがいるし、何かしてあげたいなって思いもあるし。葛藤の日々でした」

出会いは1年前の、ロッテ石垣島キャンプ。たまたま隣り合い「北海道」のフレーズが聞こえ、どちらからともなく声を掛けた。道内での2軍戦で偶然再会し、仲が深まった。清田ファンと聞いた。「清田さんを見つめる目が、無邪気でかわいくて」。そんな友の、別の面を知った。「覚悟がなくてはできない仕事。頭が下がる思いです」。

自身も含め、周囲に医療従事者が多い。東京で看護師をする愛娘も、軽症患者のケアをした。「親として、不安で心配も尽きない毎日でした」という。横浜のクルーズ船患者の治療にあたった知人もいる。「みんな命がけでした」。恐怖と不安の日々だった。

有観客試合が始まった。大好きなプロ野球の再開はうれしい。「いくら(席間を)離しても…」と不安も残るが、今週の札幌ドーム、ロッテ戦のチケットを買った。いまだ外出もままならない友の分まで、グラウンドに思いを届ける。「一緒にマリンに行きたいね」と誘った。「行きたいです!」と笑って答えてくれた友は、未知のウイルスとの最前線にいながら、野球に救われていた。(つづく)

【金子真仁】