教員の働き方改革は、短時間練習から-。春2回、夏3回の甲子園出場を誇る県立の強豪校、玉野光南(岡山)は、かねて短時間練習に取り組んできた。そのかいあってか、18年文科省が策定した「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」も、すぐに導入できたという。田野昌平監督(48)は「最初は、県立は部活動はやるなと言っているようだと思いました。これでは、部活をやるなら、私学と思ってしまうのではないかと不安になりました」と当時の正直な思いを口にした。

玉野光南・田野昌平監督(2013年8月撮影)
玉野光南・田野昌平監督(2013年8月撮影)

しかし、これまでの活動にひと工夫加えるだけで実現した。田野監督は90年、玉野光南の主将としてセンバツ初出場を果たした。「当時から、短時間集中で部活を行うシステムの学校で、土日のどちらかは休み。短時間練習はうちの伝統です」。足元を見つめ直し、新たな変化を作った。

現在も練習は午後4時10分から約2時間で、7時には全部活、完全下校。週末もできるだけ短い練習で、県の指針「平日2時間、週末3時間」を実現した。週に1日は練習が休み。現在、野球部のスタッフは5人で、新たに週末の練習の際、コーチを不定期の午前、午後の交代制とし、学校の業務に専念できる時間をつくった。12月、1月、2月は月に2回の休みを導入。また、私用でも遠慮なく休みを申告できるよう、田野監督はスタッフと積極的にコミュニケーションを図り、風通しのいい環境作りに努力している。「県立なので担任を持っている者もいる。学校の業務にあてる時間も必要。それ以外でも、休む日を増やしています」と、学校業務と部活のバランスを取っている。

玉野光南は、部活に携わる教員は短い練習時間の中でどれだけ結果を出せるかに取り組んでいる。19年にはバスケット、サッカー、柔道部の顧問がスポーツ庁が主催する「部活動サミット」に参加。学んだことを共有した。熊本県のサッカー強豪校、大津は100分の全体練習ながら多くのJリーガーを輩出。ラグビーの強豪校、静岡聖光学院は週3回、各60分で全国大会出場を成し遂げた。今や、短い練習時間は敗戦の言い訳にはできない。時代の流れを象徴していた。

意識を高く持ち集中力を高める。現在、玉野光南は練習計画を綿密に立て、短時間で効率のいい練習に取り組んでいる。その日によって、打撃の日、守備の日と分け、集中。冬は弱い部分を集中的に取り組むクールを作るなど、常に自分たちの課題と向き合い、何が足りないかを追求する。日ごろから徹底するのは基本。試合が近くなると実戦中心に切り替え引き出す力を蓄えている。

田野監督は「まずは選手の意識改革が必然です。やらされる練習ではダメ。子供たちにある程度任せられるようにならなくては」と短時間練習の難しさを痛感している。しかし、この練習で得た、取り組む姿勢や集中力は、選手の成長につながるはずだ。「単純に、練習時間を短くすることで指導者の負担は減るでしょう。そこで、いかに結果を出すかです」。今、問われる指導者の時間の使い方と指導力。その挑戦はこれからも続く。【保坂淑子】