侍ジャパン24人の選手が持つ武器やストロングポイントにスポットを当てる連載「侍の宝刀」。ソフトバンク甲斐拓也捕手(28)は「甲斐キャノン」だけではなく、投球を後ろにそらさない「ブロッキング」を武器に侍投手陣を引っ張る。

19年11月、プレミア12・スーパーラウンド最終戦の韓国戦で、右飛でタッチアップから本塁を狙う三塁走者(左)をアウトにする捕手甲斐
19年11月、プレミア12・スーパーラウンド最終戦の韓国戦で、右飛でタッチアップから本塁を狙う三塁走者(左)をアウトにする捕手甲斐

甲斐が「日本の壁」になる。プレミア12に続く選出となった侍の正捕手候補の武器は「キャノン」だけじゃない。18年広島との日本シリーズでは6連続盗塁阻止などでMVP。素早い身のこなしと強肩から繰り出される、速くて正確無比な送球は「甲斐キャノン」として有名だ。だが甲斐自身は「キャッチャーとして、盗塁阻止のことをよく言われますが『ブロッキング』が一番大事だと思っている。その機会の方が多い。盗塁を止めるより、ワンバンを止める。ランナーが1つ進むのと、進めないのでは違う。投手のしんどさも違う。キャッチャーとして一番求めているところですし、大事なのかなと思います」という考えを持っている。

昨年の捕逸は2個、今季はここまで捕逸なし。これらの数字もさることながら、投手の記録となる暴投も、昨年はチームでリーグ最少の22個だった。お化けフォークの千賀や、独特の軌道を描くカーブを投げるモイネロらをリードしながら、とにかく後ろにそらすことなく体を張ってでもボールを止める。ソフトバンク投手陣から「拓也が止めてくれるので、安心して投げられる」と全幅の信頼を得て、走者を背負った場面でも厳しいコースへの変化球をどんどん要求できる礎となっている。

18日の日本ハム戦では、ワンバウンド投球を逆シングルで捕球しながら、二盗を試みた走者を刺す「ブロック&キャノン」の離れ業も涼しい顔でやってのけた。試合数が少なく、1点の重みが増す世界の舞台でも、甲斐の総合的な守備力の高さは大きな武器になるだろう。

甲斐の主な国際大会成績
甲斐の主な国際大会成績

1軍に定着した17年からは4年連続で日本一。捕手として、クライマックスシリーズ、日本シリーズと負けられない戦いを誰よりも経験してきた。昨年は初めて、優勝の瞬間にマスクをかぶり「胴上げ捕手」にもなった。五輪に向けては「(金メダルが)すべてじゃないですか。稲葉監督も『金メダルをとるために』とずっと言われていた。そこに向かって力を出すだけ。決して楽しい場ではないが、責任を持ってやりたい」と、17年のアジアプロ野球チャンピオンシップで初めて代表に選んでくれた稲葉監督の期待になんとしても応えるつもりだ。甲斐が「日本の壁」になって、侍投手陣のボールを受け止める。【山本大地】