「坂道の源さん」こと西武源田壮亮内野手(28)が、職人気質の力を発揮する。侍ジャパン24選手が持つ武器、ストロングポイントにスポットを当てる「侍の宝刀」。球界屈指の守備力もさることながら、機動力をチームに落とし込む。

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「#源田たまらん」と、見る者がほれぼれするような職人技の守備だけで、選ばれたわけではない。試合の中で勝つために考え、自ら実践する力があるからだ。その機動力を侍ジャパンで見せつけたのは2年前、世界一になったプレミア12だった。

19年11月。プレミア12の台湾戦の9回に適時三塁打を放つ源田
19年11月。プレミア12の台湾戦の9回に適時三塁打を放つ源田

スーパーラウンド初戦のオーストラリア戦(19年11月11日)。1点を追う7回2死二塁の打席に入った。二走周東が三盗を決めると、源田がカウント2-1から絶妙なセーフティーバント(記録は野選)を決めた。周東が相手のタッチをかいくぐって生還し、同点に追いつくビッグプレー。「普通に打ちにいくよりも、何か起こるかもしれないと思った」。稲葉監督の下、逆転勝利を呼び込み、国際経験を積み上げた。

源田の主な国際大会成績
源田の主な国際大会成績

小中高と体は小さかった。中学卒業時で身長は160センチほど。中学3年の最後の大会では、まだ150センチ台だった。「背の順は一番前にいるくらい小さかった。体が大きい人たちにはどうしてもパワーじゃ勝てないし、そのときから感じていた。どうやったら試合に出られるか考えながらやっていましたね」。守備とスピードには自信があった。それを生かし、パワーを補うために人一倍工夫しないと試合には出られない。その場に応じた機動力は、試行錯誤の連続だった幼少期に身につけた能力だった。

絶対的な武器である守備の原点はソフトボール。地元の大分・明野では野球よりもソフトボールが盛んだった。小学3年の時、2歳年上の兄と一緒に始めた。野球よりも一回り大きく重い球で、塁間は少年野球の23メートルよりも短い16・76メートル。「単純に塁間がソフトボールは短い。なので、ボールを捕ったらすぐに投げないといけない。ちょっとステップが多かったりするとセーフになるので。とにかく(打球に対し)前に出る。ボールにできるだけ早くいって、できるだけ早く捕る。捕ってすぐ投げる習慣はソフトボールでできたと思います」。ゴールデングラブ賞を18年から3年連続3度受賞。球界随一の礎は、ここで培われた。

同じ遊撃には坂本がいる。しかし、メンバー選出時に言っていた。「与えられたところでしっかり仕事をするというのが自分の役割だと思う。どういう場面でも、どういう状況でも、しっかり仕事を果たせるように準備はしておきたい」。戦況を見極め、勝つために求められる仕事を遂行。職人気質の「源さん」は、静かに刃を研ぎ澄ます。【栗田成芳】