田村藤夫氏(61)のフェニックスリーグ(宮崎)リポート2回目は「投手の球質」について。球速と空振りが取れる球質を考える。

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ソフトバンクの3年目カーター・スチュワート投手(21)は、昨年もこのリーグで見た。その時と比べて球速は6キロ増して153キロ。スピードが出てきた印象を受けた一方で、打者の反応を含めてじっくり見ると、空振りが取れないことに気づいた。ファウル、もしくは前に飛ばされる。

ソフトバンク・スチュワート(21年9月撮影)
ソフトバンク・スチュワート(21年9月撮影)

タイプとしてはパワーピッチャーだけに、空振りが取れないのは気になる。私の目にはベース板上あたりでスピードが足りないように映った。ベース板上で伸びるか、ベース板上で垂れるか。これは極端な表現で、ベース板上とは打者の手元を意味するが、打者の手元で伸びるということは厳密にはない。初速と終速の差が小さいと、打者のイメージよりも速く感じ、空振りしたり詰まったりする。また、垂れるというのは、初速と終速の差が大きいため、打者の手元で極端にスピードが落ちるという意味だ。

スチュワートのボールが空振りを取れないのは、ベース板上での強さが足りないのが主要因と感じる。それは「リリースポイントが早い」「指のかかりに改善点がある」などが考えられる。それが回転数に影響し、打者の手元で減速するという仕組みだ。

対照的なのがロッテの本前郁也投手(24)だった。

ロッテ本前(21年4月撮影)
ロッテ本前(21年4月撮影)

本前も昨年のこのリーグで見ているが、その時は最速149キロ。今回は146キロ。しかし空振りが取れる。球威はスチュワートが上だが、空振りを取れるという点では本前の球質が勝る。昨年の本前はがむしゃらに投げていたが、今年は経験を積み、コースを狙い定めて投げているように見えた。リリースポイント、指のかかりが自分のものになってきたのだろう。目いっぱいの力感はなくとも、ベース板上での力強さが感じられた。こうなると、打者は何度か対戦しないと本前の球筋を見極めるのに苦労する。

それでも1軍ならば、すぐに本前の球質に慣れ、いかにベース板上で強さがあろうが打たれてしまうだろう。となると、今度は本前に求められるのは、ストレートと同じ腕の振りで制球した変化球となる。

スチュワートは今オフにマルティネスについて米国でトレーニングをするそうだ。打者の手元で伸びるよう球質改善に取り組み、メカニックを学ぶそうだが、そうした自覚があることは非常に大切だ。そうした取り組みが飛躍につながる。次回見るスチュワートの球質が今から楽しみだ。(日刊スポーツ評論家)