ロッテ、51年ぶりの優勝なるか-。夏から秋へ。担当記者のツイッターはフォロワーが増え、熱いファンたちの思いで埋まった。現実では皆、どんな熱い顔で応援しているんだろう。会いたくなった。旧本拠地の川崎から東京下町を経て、千葉幕張へ。のべ2日かけて歩き、出会えた人に尋ねた。ファンになって、人生変わりましたか? 十人十色の人生模様、そのひとコマを全4回でお届けする。

東京スタジアム跡地でロッテ51年ぶり優勝を願うロッテファンの皆さん(撮影・金子真仁)
東京スタジアム跡地でロッテ51年ぶり優勝を願うロッテファンの皆さん(撮影・金子真仁)

東京タワーが目前に迫る午後1時ごろ、三田で声を掛けられた。慶大生の原田優介さん(20)。「2時間くらい待ってました」。申し訳ないです…。三浦半島在住でマリンへは往復4時間だそう。ロッテファンは待つことに慣れているのか。長い人でもう51年。

応援に行くために、日常を頑張る。交差点の向こうで男性が手を振ってくれた。上野浩さん(59)。05年の千葉市での日本一パレードで、終了後15分でゴミが片付いたと知った。球場にも行ってみると、試合後にファンたちが率先してごみ拾いをしていた。「この一員にぜひ加わりたい! 心から思いました」。

好きになるきっかけは人の数だけある。「仕事抜け出してきたんで」と急いだ様子の40代女性にお茶をいただいた。マリン観戦歴は女子高生の頃から。「場内アナウンスの谷保さんのお声が今も変わっていないのが本当にすごくて」。谷保さんにあこがれて、アナウンス専門学校志望を担任に伝えたら、一蹴された。今はスポーツ好きに囲まれ、ビジネス街で働く。

39歳男性は営業車で先回りしてくれていた。

「私の家、貧しかったんです。お菓子は常にもらえるものじゃなくて。ロッテが優勝したら、安くなって毎日食べられるかなって、ロッテを応援しました。今はコアラのマーチも食べたい時に買えるようになって、あぁ、大人になったんだな~って」

疲れた足を動かしてくれる、夕暮れの温かな話。ゴール手前で会った中西賢二さん(44)の話は逆に、ちょっと面白かった。

「絶対に声出しちゃうから、球場行くの我慢してるんです。家でも大声で応援するから、飼ってるネコが3匹ともダッシュで部屋から逃げ出すんですよ」

各地で歩く元気をもらい、旅初日の目的地にたどり着いた。51年前の胴上げの地、南千住の東京スタジアム跡地。約8時間歩いた最後に、吉野敏行さん(45)神子知子さん(52)臼井亮さん(20)木村淳一さん(37)ら5人が待ってくれていた。感謝に尽きる。

初対面同士なのに、5人とも意気投合しているのがすごい。自転車の親子もやって来た。私の問いかけに対し、ツイッター上で「#ロッテファンになって人生変わりました」のタグを作り、ファンの間で多くの人生物語が交わされた。彼女の8歳の長男も回答していた。「ぼくは生まれてからずっとだから、変わった気はしないね」。楽しい野球人生を、ぜひ。【金子真仁】(つづく)