楽天三木谷浩史会長兼オーナー(53)が、余すところなく語ります。球界再編問題を乗り越え、2005年(平17)シーズンから参入。イノベーター(革新者)の精神で平成後期の球界に息吹を吹き込み、13年に日本一を達成しました。来年のオーナー会議では議長を務める大物が、平成最後の年の瀬に何を思うか。最終回です。

 ◇  ◇  ◇

平成という時代の約半分、2005年(平17)からの14年間で、イーグルスは何が出来たのだろうと考えます。

今までにない球団の企画であったり、ファンエンゲージメント(ITを活用してファンの満足度を高め、喜ばせる)であったりは、我々が率先して始めて。ソフトバンクさん、DeNAさんを含めてだんだんと、プロ野球界がいい方向へ進むような…少なくとも上昇気流に乗せる先鞭(せんべん)をつける面は、微力ですがあったのかなと思っています。

天然芝は、コストがかかっても絶対に、雰囲気が良くなる。選手にとっても最終的には、満足度が高くなる。FAで岸や浅村が来てくれたことは、おそらく、スタジアムも理由としてあったと思うんです。サイズが大きいからホームランバッターは大変かもしれないけど、野球の醍醐味(だいごみ)を提供したい。そんな観点を持って、やってきました。

楽天として、野球もサッカーも含め、せっかくここまでスポーツブランドを作ることが出来たので(※1)。もっと大きく総合的な「日本国民の方々の健康」という意味で、何かうまい仕組み、ブランドを作っていけないか。5年、10年のスパンで伸びていくと思うので。僕がやっているがん治療(※2)もそうですけど「健康」という面から入っていけば、何かが生まれるのではないか。

先日スパルタンレース(※3)をスタジアムでやりましたけど、野球も見ているだけじゃなくて、みんなに体を動かしてもらうとか、新たな価値を創造できれば。いまだかつて、みんなが挑んでいないところに破壊的イノベーションを作り出していくのが楽天。挑戦を続けていきたいと思います。(この項おわり)

【取材=宮下敬至】

(※1)04年にサッカーJリーグ神戸、05年から楽天を運営。神戸にはポドルスキ、イニエスタ、ビジャと世界的プレーヤーが続々と移籍、一気に注目が高まっている。16年、スペインサッカーリーグの名門バルセロナと4年約286億円でスポンサー契約。17年にパートナーシップを結んだ。17年には、米プロバスケットボール協会NBAの強豪ウォリアーズとも3年約66億円でスポンサー契約。NBAの日本国内での独占的な放映・配信などの契約も結び、総額で約248億円以上の規模と報じられた。テニス界へのサポートも積極的で、国際大会「ジャパンオープン」を主催。今年8月には、三木谷氏が支援する会社が25年約330億円を出資し、テニスの国別対抗戦デビスカップ(デ杯)の大幅改革に乗り出した。

(※2)18年11月、標的のがんに光を当てて治療する「光免疫療法」を開発する「楽天アスピリアン社」の最高経営責任者(CEO)に就任。新たながん治療法の開発を目指し、臨床試験も進んでいる。三木谷氏は、13年に父の良一さんを膵臓(すいぞう)がんで亡くしている。

(※3)「世界最高峰の障害物レース」「マラソンの次のモチベーション」と呼ばれ、世界で100万人以上の参加者がいるとされる。不整地や傾斜地に仕掛けられたさまざまな障害を乗り越え、タイムや順位を競う。イメージはTBSテレビの人気番組「SASUKE」のハード版。楽天は18年、同レースと複数年のパートナーシップを締結。

5月、神戸に加入が決まり、三木谷オーナー(左)と記念撮影するイニエスタ
5月、神戸に加入が決まり、三木谷オーナー(左)と記念撮影するイニエスタ