開幕してはや3カ月。ウエスタン・リーグは中盤を迎えて佳境にはいっている。スポーツ紙等に目を向けてみる。紙面の扱いは1軍と2軍では雲泥の差。これがプロ野球界。ファームの炎天下で汗と泥にまみれた選手の姿は、まさしく試練の場。大きな夢を抱いて野球に取り組んでいる。近くで見ると真っ黒に日焼けした顔がたくましい。若い。目は輝いている。勝負の世界で生き抜くためには、夢を-。希望を-。願望を-。すべてをかなえる努力を惜しまないことだ。

 先日、甲子園球場で阪神-ソフトバンク戦を取材した。もちろん、2軍戦。試合前のこと、取材に必要な資料に目を通していて「えーっ」という驚きを「やっぱり」という納得の材料が目にはいった。さすがはソフトバンク、早速、水上監督を取材してみた。

 開幕して10試合を消化した時点で2勝8敗だった。目下同リーグで5連覇中だが、今年に限っては“ひと休み”を思わせるスタート。先発メンバーを見る。変化があった。昨年の中心選手だった上林が1軍のレギュラーどりに成功。巧みなバットコントロールあり、長打ありで大活躍。クリーンアップの一角を担っていた長距離砲の猪本はロッテへ。2年連続してホームラン王を獲得した外国人カニザレスは退団した。ファームとはいえ主力の3人が抜けた。勝つのは難しいのは当然だが、チーム作りには定評がある。いつの間にか指定席(首位)にドッカと座って、さらに記録を伸ばすべくレース展開をしているのではないか。

 昨年もチーム作り、5連覇に向けての話を聞いたことがある。同監督、その時は「1軍から、自分の力不足を痛感してファームにおりてきた選手が、技術の向上を目指して、自分から進んで練習をしますので、若い選手はそれを見て、あの人が、あそこまで練習するなら自分はもっと、との思いで取り組んでくれますので」と盛んに相乗効果を強調していたが、今年はその上を目指して指導している。「技術面だけではなく、頭の方も成長していますから」確かに、突出した選手はいないが、しっかと足で地を踏みしめて前進している。

 頭の成長。ひとつの例を挙げて説明してもらった。「ケースによっていろいろ考えられますが、その選手の立場は1軍と2軍では全然違うと思うんですよ。例えば、ファームでクリーンアップを打っている人、この人たちが1軍でクリーンアップを打てるかというと、そうではないんです。どちらかといえばバントをしっかり決めないといけない打順の選手のほうが多いんです。なかには何で3番の俺が…。とか、4番が何でバントや…。と思う人も正直いますが、1軍を想定した場合は1死からでもバントさせるんです」。そういえば2試合目、初回から3番にバントのサインが出ていた。そしてときには、2点以上の差がついているのに1死からランナー一塁でバントを試みた作戦もあった。確かに、これがファームの野球かもしれない。

 この中からひのき舞台でファンを魅了する選手が出るのは、ほんの一握りだろうが、プロだ。好きで飛び込んだ以上夢はどこまでも追い続けてほしい。3連戦の中日、先発のマウンドには阪神が藤浪。ソフトバンクは武田が上がった。両投手、一時は1軍ローテーションの一角を担う存在。それぞれ事情があっての登板だが、当然復活を目指してのもの。これもプロの世界。調子を落とせばファーム落ちは日常茶飯事。なぜ…。力を競い合う競争社会であり、1軍は勝利が最優先するからだ。

 1軍がすべて。ソフトバンクの「1軍想定作戦」は前向きな方針。上昇ムードの一翼を担っていると見た。

【本間勝】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「鳴尾浜通信」)