まさに猛暑日。灼熱の太陽が照りつける鳴尾浜球場。前半戦首位で折り返した阪神が、14日ウエスタン・リーグの後半戦に備えてスタートを切った。アップに始まりキャッチボール、フィールディング、バッティング、ピッチング等々、次々と消化していく。炎天下だ。半端なく暑い。熱中症が気になるほど。水分を十分補給しながら練習を拝見した。

 貯金の13(74試合、41勝28敗5分)は、チームが掲げたスローガン“執念”と、矢野監督がシーズン前ファームのテーマにした“積極性”が、ガッチリかみ合って生まれた集中力の副産物と見た。

 執念-。約束事を成し遂げるために動かない一念。

 積極性-。物事に対して進んで行動に移す気持ち。

 いずれも、気持ちの持ち方で大事なのは集中力である。ひとつ、ひとつのプレーに集中することによって技術は向上し、選手個々の自信につながる。そして、自信は勝利となって跳ね返ってくる。例えば、現在の阪神ファームには“待て”のサインは皆無に等しい。盗塁がそうだ。15日現在113個。ノーサインで「行けるときに行け」の方針で、リーグでは群を抜いてトップ。ファームのテーマと入団してきた新人の持ち味が一致した。持ち味を伸ばすことは選手育成の基本であり、ルーキーは水を得た魚のように走り回っている。熊谷が20個で島田が19個。各チームに脅威の足と恐れられている。矢野監督は「浸透してきたと思います。各チームがものすごく警戒してくれています。全然走るケースではない場面でもけん制してきますし。うれしいですよ。こうしてこうして後押しすることで、こんなに盗塁数が増えるとはねえ。想像以上です。選手にとっては自信になりますし、成長につながりますから」ファームの監督は初めての体験。手探りで指揮を執るケースもあったはず「いや、いや。手探りばっかりでしたが、前半戦を振り返ってみると、まあまあやってこれたかな」一度はやってみたかったポジション。気合いがはいっている。

 トップでの折り返しは若手が成長した証しともいえる。特に一塁への全力疾走。ひとつでも前の塁へ進もうとする前向きの姿勢。等々、走塁に関しては申し分ないのはよくわかったが、ピッチャーの投球内容。バッティング面の内容。打球に対しての守りでの積極性はいかがか…。同監督は「ピッチャーは攻めていけるようになったし、バッターも初球からいつでも打っていけるように心掛けていますし、守備にしても、守備位置を思い切ってかえたりしています」というが、試合の中でのピッチャーを見ていると、まだまだ。ボール球先行のピッチングが目立つ時がある。「まあ、能力の問題もありますから」とつけ加えてくれたが、確かに2軍の投手である。成長過程を考えた場合、ボール球先行はあって当たり前のこと。とやかく言う問題ではない。

 チーム全体のことを考えるなら、やっぱり本質は1軍ありき。戦力の補充はどうか。ピッチャーでは藤浪の完全復活が待たれるが、才木がデビューした。馬場も1軍のマウンドを体験した。望月、谷川の若手も1軍を経験。そして、岩田が復活の兆しを見せれば、能見はリリーバーで完全復活した。野手では上本が昇格してチームを生き返らせたが、不運にも再度の故障でリタイヤ。江越、板山は昇格したものの定着できず。中谷も期待に応えるに至っていない。現在、昇格して頑張って陽川。打線の軸、4番候補の一人となっているのはすごい。そして北條がレギュラー獲りを虎視眈々と狙っているのも注目の的。後はファームで散々打ちまくった大山のバッティングだ。

 「マイナーチェンジはあるかもしれませんが、後半戦もやることは基本的に変わることはないと思います。積極性は前向きの気持ちがあってできること。選手同士がいい意味でライバル意識を持って競い合ったほしい」

 矢野監督である。後半戦は16日からスタートする。相手はソフトバンク。タマスタ筑後で首位攻防の4連戦。技術の向上に、勝負事に必要不可欠なのは集中力だある。

【本間勝】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「鳴尾浜通信」)