2018年も残りわずか。そして来年は平成が幕を閉じ、新時代がスタートする。野球評論家の西本聖氏に平成のプロ野球を振り返ってもらった。

-来年4月いっぱいで「平成」が終わる。この30年間のプロ野球を振り返って

西本氏 選手の立場が強くなったと思う。FA、逆指名ドラフトが大きい。私が主にプレーした昭和の時代は、選手は球団の商品だった。オフの契約更改で提示額に納得がいかなくて保留したとする。「じゃあトレードに出すよ」と脅される。これが私の現役時代の選手の立場だった。今は違う。シーズンオフにしても12月、1月の2カ月間は球団は選手にタッチできない。我々の時代は12月の末まで強制的に練習させられていた。

-メジャーに行く時代になった

西本氏 メジャーに行くのが当たり前になった。自分も(昭和)56年にドジャースのベロビーチでキャンプをした際にオープン戦でメジャーの打者を抑えたことがあった。シュートを投げたら打たれなかった。ただ、その時はメジャーに行くなど考えられなかった。これも時代の流れ。選手にとって良い環境だと思う。

-野球はどう変わったか

西本氏 好投手がメジャーに移籍することもあるが、全体的に打高投低。投手のレベルが落ちたと感じる。200イニング投げる投手が減っている(今季は巨人菅野1人)。防御率もセ・リーグでは6球団中5球団が4点台。3割打者が15人もいる。

-何が原因か

西本氏 内角を攻めなくなっている。投手の配球を見ても7~8割が外角。制球に自信が無いのか内角に投げきれない。

-練習方法にも問題があるのか

西本氏 投げ込みをしない投手が増えている。やはりキャンプで投げて、投げて、投げることによってコントロールを磨かないといけない。なにも300球や400球も投げる必要はないが、200球、250球は投げ込まないと。投げることによって得るものは必ずある。自分は200球超えてからが本当のピッチング練習だと思ってやっていた。それで20年間、肩も肘も故障無くやってこれた。フォームのバランス、体幹、投げるスタミナ、コントロール。投げ込まないと身につかない。

-プロ野球ではないが、高校野球では投手の球数や連投が問題になることが多い

西本氏 これは指導者、監督の戦略が大きいと思う。1人のエースに頼るのか、複数の投手で勝負するのか。それによって練習のやり方も変わってくる。それと投げすぎたからといって故障するものではない。壊れるには壊れる理由がある。正しい投げ方を身に付けて欲しい。

-最後に今後のプロ野球に期待することは

西本氏 真剣勝負を見せて欲しい。ファンも真剣勝負を望んでいる。今は、グラウンド上で白い歯を見せすぎ。試合の終盤、競り合った場面でタイムリーが出る。打った選手と打たれたチームの野手が白い歯を見せて笑っている。もし私が打たれた投手なら「ふざけるな!」となる。真剣勝負にはあってはならないこと。確かに侍ジャパンや自主トレで他球団の選手と仲良くする機会が増えた。お互い親しくしたり、情報交換したりするのは良いかもしれないが、表に出すぎ。プロとしてグラウンド上でファンに見せるべきではない。ここはコミッショナーがしっかり見ていかないといけない。真剣勝負。これを切に望みたい。