楽天田中将大投手(32)が、日本復帰初戦となる日本ハム戦で5回4安打3失点で黒星を喫し、国内シーズンの連勝記録が28で止まった。

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日本球界に復帰した楽天田中将が、どういうピッチングをするのか? 楽しみにしているファンと同じような気持ちで、私も注目していた。5回を3失点。バリバリのメジャーリーガーでもあり、日本球界では28連勝中の右腕だけに、結果に満足できない人も多いだろう。しかし、投球内容を振り返ってみると、今後に不安を抱くような中身ではなかった。

最初に「おやっ?」と感じたのは、初回2死で迎えた近藤の打席だった。4球続けた真っすぐが、すべて外角高めに抜けてボール。球速は151キロ、150キロ、147キロ、147キロ。初球と2球目は力を入れて投げていたが、3球目と4球目は明らかに力をセーブしていた。それでも同じように抜けてしまっていた。

コントロールの悪い投手なら「これも実力」と片付けられる。しかし、本来は制球力抜群で、経験も実績も文句なし。そんな投手が分かりきったミスを続けるのには、それなりの原因がある。開幕前に痛めた右ふくらはぎの影響以外に考えられない。

思わず自分でシャドーピッチングをして、右ふくらはぎの力の入り具合を確認した。もともと投球フォームは、左足を上げた後に軸足の膝を沈め、力をためてから投げる流れ。小手先や上半身で高低を調節するのでなく、下半身を低く使って低めへの制球力を高めている。特に強い真っすぐを投げるためには、右ふくらはぎは最も重要な部分。本人は痛みや違和感がなくても、故障後でもあり、自分が考えている以上に力が入らなかったのだろう。

近藤の打席で修正できないまま迎えた右打者の中田には、内角を狙った真っすぐが引っ掛かり気味になって、やや外角への高めに。左打者の石井には内角を狙った真っすぐがシュート回転して甘く入った。失点はこの2ランとソロだけだった。

3回以降は捕手のサインに何度も首を振って変化球主体の投球。右ふくらはぎへの負担が少ない変化球は制球力も良く、3回を1安打無失点。悪いなりに抑える投球術があることを証明した。

ケガをしてから1度、2軍で調整登板していれば、近藤への四球も、2本の本塁打も防げていただろう。体の不安がなければ、次回先発では結果を出せる状態だと思っている。(日刊スポーツ評論家)