生え抜き長距離砲として期待されていた阪神中谷将大選手が2日、ソフトバンクにトレードされました。少し驚き、同時によかったかも…と感じ、思い出したことがあります。

9年前の12年11月、高知・安芸キャンプ。ファームでプロ2年目を終えた中谷はそこで三塁の守備に挑戦していました。高校時代は捕手、阪神入団後は1年で外野手に転向。しかし出番を増やすために内野にも挑もうとしていたのです。

「三塁の守備位置に付くのは初めて。動きは全然、分からなかったです。難しいですよ。三塁守備で思い出すのは小久保さんですね」。福岡出身で少年時代からホークス党だった中谷はそう話したものでした。

言うまでもなく現在、ソフトバンクでヘッドコーチを務める小久保裕紀氏です。そんな記憶があるだけに今回の移籍をきっかけに頑張ってほしいと思います。

外野の守備力もありますが期待されるのはやはり長打でしょう。彼の“プロ初本塁打”も見ています。やはり12年4月12日のウエスタンリーグ・オリックス戦(鳴尾浜)でした。

高卒2年目の中谷は7回に1、2軍を通じて初アーチとなる決勝弾を左腕の山田修義が投じたスライダーをとらえ、左翼越えに放ちました。

「ずっと変化球ばっかり投げられていて真っすぐは来ないと。だから変化球を狙っていました」。きっちりとヤマを張って打ったことをうれしそうに言ったものです。

そんな本塁打に中谷を当時、2軍打撃コーチとして熱心に指導していた立石充男氏(現・中日2軍野手総合コーチ)は笑いながら、こんな話をしました。

「右投手のときはまだ少し腰が開くけど左はいい感じで振れるようになってきた。でも、まあ、いい感じになってもひと晩寝たら忘れる。『寝るな』って言ってるんだけどな」

さすがに寝ない訳にはいかないけれど立石氏の言うこともなんとなく分かりました。今回の地元復帰、知人、友人も多いでしょうが、ここはひとつ「寝ずに」、いや野球以外は寝るだけぐらいの意気込みで取り組んでほしいものです。【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「高原のねごと」)