ど派手な1面が並ぶ。2月8日付の関西スポーツ新聞。阪神の新外国人選手の本塁打共演! キャンプ中に行われたシート打撃で、ノイジー、ミエセスが連弾し、それを1面、裏面を使って、大きく報じた新聞もあった。

ホームランは野球の華。打たないより、打つにこしたことはない。でも、この1発だけで果たして信じていいものなのか。

そんな気持ちになるのは、過去に何度も痛い目にあっているからである。それも最近の外国人には裏切られ続けている。鳴り物入りで獲得した数年前のロサリオと、直近のロハスジュニア。韓国野球でタイトルを獲得し、数億円の待遇で迎えながら、片りんさえ見せなかった。

「外国人は実際に来てみて、生で見ないと判断できない。ギャンブル的要素が多すぎる」と岡田はいつも言う。

過去、阪神で活躍した野手は多くいた。バースが代表格だが、オマリー、マートンら優良選手の名が思い出される。それに続くのがパチョレック、アリアス、シーツ、ブラゼルといったところだが、彼らには共通点がある。阪神に来る前、日本の他のチームでプレーしていたという点なのだが、やはり日本野球を経験しているか未経験かは、大きな差になることがわかっている。

外国人野手といえばホームラン。これを当然、期待する。阪神の歴史の中で、バース以上に期待されて来日したのがロブ・ディアーだった。高知・安芸キャンプでベールを脱ぎ、フリー打撃ではレフト方向に大きな放物線を描き、あまりの飛距離に「ディアーネット」が設置されるほどだったが、シーズンに入れば、音無しの構えで途中退団。聞くと見るとでは大違いの典型的選手だった。

やはり外国人なら、いくら甲子園といえど30発は打ってもらいたい。ところが、このラインをクリアしたのは2010年のブラゼルの47本塁打。これ以降、出現していない。その前は2003年のアリアスが放った38本塁打。要するに10年以上、30本をクリアした外国人はいないわけだ。

となれば、せめて高打率をと願うが、3割をマークしたのは2014年のマートンが最後。彼はこのシーズン、打率3割3分8厘とヒットメーカーの力を存分に見せてくれた。

そのマートンだって、来日した当初は、酷評されていた。球界OB、評論家のほとんどは、アテにできない打撃と評し、ほとんど期待されていなかった。しかし、わからぬものだ。実戦に入ると、ヒットを量産。この様変わりに多くのファンは歓声を上げた。

さてさて、今年はどうだ。元々、ミエセスは日本でテストする…といった程度の計算で、この先、どう伸びていくかにかかっているが、ノイジーはそうではない。決して打線の軸としては考えないが、岡田には「第2のシーツ」としての計算がある。アンディー・シーツの2005年の成績を並べてみる。打率2割8分9厘、19本塁打、85打点。おまけに一塁手としてゴールデングラブ賞に輝いている。この数字の中、特筆されるのが打点の85。3番として、これは優秀な数字であり、そのあとを打った金本、今岡にうまくつなぎ、リーグ優勝の立役者のひとりになった。

ノイジーのバッティングを生で見て、他の球団スコアラーは「(巨人にいた)マギーのようだ」「阪神にいたサンズに似ている」と、早くも警戒するコメントを残しているが、目指すべきタイプはシーツ! 2005年のシーツのバッティングの再現となれば、後ろの大山、佐藤輝はさらに生きるに違いない(あくまでノイジー3番を想定して)。

ミエセスのような派手さはないし、シート打撃でホームランを放ったからといって、大喜びするわけでもない。落ち着いた空気感を持つところがいい。問題はこの先。新外国人野手が必ず戸惑う日本人投手の投球パターン。変化球をうまく使われ、追い込まれて最後は外に逃げる曲がり球、さらにコントロールのきいたフォークボール。これをいかに見極められるか。その対策、対応に尽きる。

そんなノイジーについて聞かれた岡田はひと言。「おーん、いいやん」。直すべきポイントを即座に見つける岡田が放ったコメント。岡田の最大級のほめ言葉であり、現状はまったく問題なし、とみていいだろう。(敬称略)【内匠宏幸】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「岡田の野球よ」)