エンゼルスの大谷翔平の移籍話は消滅。大騒ぎしたものの、さすがに大谷ともなれば、最後は二の足を踏んだか。エンゼルス残留で、ここからポストシーズン進出をかけ、彼の勝負が始まる。

MLBの場合、トレード期限ぎりぎりまで、何が起きても不思議でない。現に今年も大物投手の電撃トレードが決定。優勝を狙えるチーム、ポストシーズン進出の可能性があるチームは、可能性を求めて、期限ギリギリまで粘ると聞いた。

これはメジャーだからで、NPBではそんなサプライズはまず起きることがない。今年も期限が過ぎ、平穏な8月戦線を迎えた。正直、セ・リーグの中日、ヤクルトは大きく優勝争いから離れ、これからの巻き返しも厳しいだろう。これがMLBだったら、トレードを申し込まれるチームとなる。

中日にはとんでもないピッチャーがいる。クローザーのマルティネス。最下位のチームにあって、クローザーとして投げたゲームは確実に抑え、今季のセーブ数はリーグ2位。それ以上に強烈なのが、まったく危なげないピッチング。8月2日の阪神戦も、2点リードの9回表、マウンドに現れて、簡単に3人で片づけた。

今シーズン、33試合に登板し、依然として防御率は0・00。まだ自責点はゼロだ。

今年はどの球団もクローザー受難のシーズンといっていい。若いクローザーである巨人・大勢、阪神・湯浅、広島・栗林。彼らはWBCの影響もあったのか、そろって出遅れ。湯浅に至っては、今季中の復帰は絶望的…という報道まであった。

そこで広島は矢崎をクローザーに指名し、現状はそれがハマっている。阪神はといえば、頼りになるのが経験豊富な岩崎。ここもまず問題はないはずだ。

阪神湯浅京己(2023年6月15日撮影)
阪神湯浅京己(2023年6月15日撮影)
阪神岩崎優(2023年7月26日撮影)
阪神岩崎優(2023年7月26日撮影)

巨人が穴埋めに苦しんでいるし、DeNAも山崎についに見切りをつけ、クローザーからの配置転換に着手した。

それではしっかりとしたクローザーがいて、そこにつなげれば勝てる。それがヤクルトと中日。これは何ともおかしな現象だ。ペナントレースでは、大きく水をあけられたヤクルトの田口、そして中日のマルティネス。この2人がセーブ数争いのトップ2。となれば、MLBのような、大サプライズのマルティネス緊急補強へ、なんて話を期待したが、やはりここは日本。これはあり得ない話だった。

ペナントレースも8月に入り、残りは50試合ほどになった。ここからは阪神監督の岡田彰布が言うように「ブルペン勝負。クローザーを含めたブルペンの争い」になるようだし、これはどこのチームの監督も認めている。

さあ、補強期限が過ぎ、ここからは現有戦力で挑んでいく中、阪神のクローザーは岩崎ひとりで大丈夫なのか。湯浅の結果報告があったことで、岡田は腹をくくったに違いない。岩崎にかける。岩崎に踏ん張ってもらう…。その一方で柔軟に対応していくことも、頭にはあるはずだ。

そこで昔のフレーズを思い出した。「ダブル・ストッパー」。例えば1985年の山本和行と中西清起に例えられたこのフレーズ。また2005年以降、JFKはどこの持ち場であっても、仕事をこなした。いわゆるトリプル・ストッパーのような力が、彼らにはあった。

だとすると、岩崎ひとりで残りを乗り切れない場合、岡田は誰をそこに当てはめるか? 順当なら岩貞になるが、右投手ということで加治屋、石井智、浜地の名も挙がるはず。いずれにしても、ここからは戦力とともに、監督の采配力にかかってくる。【内匠宏幸】 (敬称略)

阪神岡田監督(2023年8月1日撮影)
阪神岡田監督(2023年8月1日撮影)